鎌田大地、久保建英は《堅守速攻》で輝けるのか 4年後へ日本代表は攻撃の軸を誰にする

鎌田は4年後も2列目の主力候補だ photo/Getty Images

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スタイルも重要だが、選手の個性を見極めるのも重要

4年後へ向けて日本代表は今大会の戦い方を継続すべきなのか、それともボールの保持率を高めて積極的に仕掛けていく攻撃的サッカーを目指すべきなのか。FIFAワールドカップ・カタール大会をベスト16の成績で終えてからは、こうした議論が加速している。

粘り強い守備と前線のスピードを活かすスタイルでドイツ、スペインを見事に撃破した一方で、グループステージ第2節のコスタリカ戦を0-1で落としてしまうなど日本の評価は難しい。ベスト16のクロアチア戦も思うように攻め込めず、いわゆる堅守速攻だけでベスト16以上を狙うのは厳しいとの見方もある。

問題は、4年後へ向けて誰を攻撃の中心に据えるかだ。今大会はスピード豊かな伊東純也、前田大然、浅野拓磨、1対1で仕掛けられる三笘薫、2ゴールを奪った堂安律といったアタッカーが躍動した一方で、現代表の中でも1、2を争うテクニシャンである鎌田大地や久保建英は100%の輝きを放てなかった。鎌田も良いプレイは見せていたが、フランクフルトでの活躍を考えれば絶好調というわけではなかったはずだ。
鎌田にはトッテナム、ローマ、ドルトムントなど強豪クラブからの関心も噂されており、来夏にステップアップする可能性が高い。4年後のワールドカップを29歳で迎えることを考えれば、鎌田が実力を発揮しやすいチームスタイルを選択すべきではないだろうか。

それは4年後に25歳と中堅世代になる久保も同じで、今季はレアル・ソシエダできっちりと出番を得ている。この4年間でさらにステップアップしてほしい選手で、上手くいけばチャンピオンズリーグ常連クラブでもプレイ出来るかもしれない。となれば、もちろん久保の実力も代表で引き出したい。

その際、堅守速攻スタイルが2人に合うかは微妙なところだ。それはカタールの地で2発奪った堂安にも言えることで、堂安もスピードスターというわけではない。前線で体を張れるレフティーの堂安は本田圭佑を思わせるところがあり、どちらかといえばボールを支配した状態での攻撃的サッカーの方が個性を発揮しやすいはずだ。

チームを作る際には指揮官が理想とするスタイルに選手が合わせるよう努力するのか、それともチームのピースに合わせて指揮官が柔軟にスタイルを変えるのか。2つの考え方があるが、いずれにしても誰を軸に攻撃を展開していくのか指針を明確にしていくことは重要だ。強豪をリスペクトする堅守速攻型と最初からスタイルを決めつけてしまえば、鎌田や久保といったテクニシャンがやりにくくなるかもしれない。

久保もカタール大会では守備に追われる時間が長かった photo/Getty Images

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もう一度自分たちのサッカーにチャレンジする時はいつか

そもそもチームスタイルの議論が活発化するきっかけとなったのが、アルベルト・ザッケローニ体制で臨んだ2014年のFIFAワールドカップ・ブラジル大会だ。本田圭佑や香川真司を軸にポゼッションサッカーで世界に勝負を挑んだザックジャパンは、親善試合でフランスやベルギーを撃破するなどサポーターを魅了した。ところが肝心のワールドカップ本番では1勝も出来ずにグループステージ敗退。このショックが今も日本サッカー界には残っており、いわゆる『自分たちのサッカー』と色気を出すには時期尚早との見方が広まった。攻撃的なサッカーをするにはワールドクラスのタレントが不足しており、今は守備的な戦いをベースにした方が良いとの意見だ。

今大会も、そのやり方でドイツとスペインを撃破した。守備を固めたところから速攻で相手を崩すスタイルで強豪を立て続けに撃破することになり、このスタイルに手応えを掴んだサポーターも少なくないだろう。

しかし、コスタリカとクロアチアの守備攻略に手を焼いたのもまた事実。本来であればグループ最弱と考えられたコスタリカ戦で確実に勝ち点3を掴むべきで、この一戦を落としてしまったのは反省材料だ。速攻も重要だが、次の4年間で自分たちから相手を崩す術も身につけていくべきだろう。

特に日本はアジアに戻れば立場が変わる。ワールドカップでは中堅国でも、アジアでの立ち位置は強豪だ。何ならアジア最強との見方もある。アジアの戦いでは相手が引いて守りを固めてくることになり、日本は自分たちからその守備をこじ開けないといけない。

FIFAワールドカップ・カタール大会をベスト16で終えた日本は、次なる目標としてアジアカップ2023制覇に臨む。ザックジャパンの攻撃的サッカーは何かと批判を浴びることもあるが、日本が最後にアジアカップを制したのはザックジャパンだった2011年大会だ。その後のアギーレジャパン、森保ジャパンではアジアカップ制覇に失敗しており、ワールドカップ本番の結果だけでザックジャパンを失敗と決めつけるのも難しい。

何よりワールドカップ後に行われるアジアカップは日本サポーターの熱量に大きな影響を与える。ザックジャパンは激闘の連続でアジアカップ2011を制したことでFIFAワールドカップ・ブラジル大会への期待感が高まり、代表人気を持続させることが出来た。日本サッカー界への関心や注目度を高めるうえでアジアカップも軽視してはならない大会で、ここで相手の引いた守備ブロックに手を焼くわけにはいかない。アジアカップでは攻撃的なスタイルで相手を圧倒することが求められ、ザックジャパンの人気が高まった要因の1つはそこにある。ワールドカップ本番ならまだしも、アジアの戦いで攻めあぐねる展開は退屈との印象を与えかねない。

カタール大会でドイツ、スペインを撃破したことで日本代表への注目度は確実に上がっている。それを確固たるものとし、最高の熱量で2026年大会へ向かうためにもアジアカップ制覇は重要だ。サポーターが求めているのは三笘、鎌田、堂安、久保らアタッカー陣の躍動であり、2026年大会への期待を高める戦いを見せたい。

アジアの戦いとワールドカップ本番でスタイルを使い分けるのは簡単ではないが、やはりアジアでは攻撃的なサッカーが求められる。カタール大会で確立した堅守速攻のオプションは残しつつ、自分たちからボールを動かして相手を崩す攻撃的スタイルも磨いていく必要があるだろう。

ザックジャパンでのブラジル大会敗退の記憶は辛いものではあるが、8年前に比べて個の能力が上がっていることもカタール大会では確認できた。特に守備陣は冨安健洋、板倉滉といった5大リーグで活躍するセンターバックが出てきており、守備の強度は明らかに8年前より上だ。海外で活躍する選手も増えた今、もう一度攻撃に比重を置いたスタイルに挑戦してみるのも悪くない。遅攻のクオリティアップは4年後へのキーワードとなるはずで、鎌田や久保といった選手はそちらの方が個性を発揮しやすいだろう。

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