ポゼッションサッカーは本当に意味がなくなったのか あれはシャビ、イニエスタらしか出来ぬ“神の領域”だった

ポゼッションを軸に黄金期を築いたバルセロナ photo/Getty Images

あれは当時のバルサ&スペイン専用システム

今回のFIFAワールドカップ・カタール大会で盛んに言われてきたのが、ポゼッションサッカーの終焉だ。今大会も高いポゼッション率を誇ったスペイン代表はグループステージ最終節でポゼッション率17%だった日本代表に1-2で敗れ、ベスト16のモロッコ戦も77%のポゼッション率を記録しながら最後まで得点を奪えず、PK戦の末に敗れた。

もはや単なるポゼッション率に意味はなく、トレンドが変わってきているのは確かだろう。しかし、ポゼッションサッカーが使い物にならなくなったわけではない。

単純にバルセロナやスペイン代表が2000年代後半から2010年代前半にかけて見せたポゼッションサッカーは、全盛期のシャビ・エルナンデスやアンドレス・イニエスタ、セルヒオ・ブスケッツらがいなければ完成しないものだったのだろう。バルサとスペインの成功から多くのチームがポゼッションにこだわるようになったが、当時のバルサ&スペインの再現は不可能であり、両チームのパスワークはパススピードもゲームビジョンも異常なレベルにあった。今でもあのクオリティを発揮できるならポゼッションベースのサッカーも通用するはずだが、あれは他のチームには真似できないものだ。

さらにバルサならリオネル・メッシ、スペインならダビド・ビジャといった決定力の高いFWがいたことも見逃せない。ボールを支配して相手を押し込み、チャンスを多く作ってメッシやビジャのような選手がゴールを決めてくれるなら、ポゼッションサッカーは今の時代でも有効なはずだ。しかし、それが出来るチームは現状皆無と言ってもいいだろう。

先日、ブスケッツがスペイン代表引退を表明した。やはりスペインはこれを機にスタイルを変えるしかないのだろう。現在のチームではペドリがイニエスタと比較されているが、中盤でゲームをコントロールしたシャビの後継者となる選手は見当たらない。EURO2008、2010FIFAワールドカップ・南アフリカ大会、EURO2012を制した栄光の過去を一旦忘れ、新しいスタイルを模索していくときだ。

ブスケッツの代表引退のニュースを受け、SNS上ではティキ・タカの終わりだとする意見が多く出ている。

「ティキ・タカは退屈だ。シャビ、イニエスタ、シャビ・アロンソ、ブスケッツがいたときは意味があったが、今の選手は同じ才能ではない。ほとんどの場合は意味のないポゼッションだ」

「シャビ、イニエスタ、ブスケッツのトリオがいかに多くのポゼッションでサッカーを支配したか。彼らはMFの可能性の頂点だったと思う」

「あれはシャビ、イニエスタ、ブスケッツがいたときに機能する。そうじゃなければ創造性のないポゼッションであり、退屈だ」

スペイン代表も以前はセスク・ファブレガスやダビド・シルバなど他にもティキ・タカのレベルを高められるテクニックの持ち主が揃っており、あれだけのテクニック集団は今のスペインにも作れない。

当時のバルセロナやスペイン代表のようなサッカーが見れなくなるのは寂しいが、究極のポゼッションサッカーを完成させられたのは当時の2チームだけなのだろう。あれを追い求めた各国はポゼッションの幻想から目覚め、新たなスタイルを追求するしかない。それはスペインも同じで、ブスケッツの代表引退はスペイン代表の1つの時代の終わりを意味するのだろう。

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