優秀な指揮官の条件の1つに挙げられるのが『修正力』だ。試合前に決めたプランが上手くいかなかったとき、指揮官はハーフタイムに指示を与えたり、交代カードを切ってゲームの流れを変えなければならない。
今季よりマンチェスター・ユナイテッドを指揮するエリック・テン・ハーグが評価されているのは、その修正能力の高さだ。
テン・ハーグは時間をかけながら自身の哲学をチームに浸透させており、その効果は確実に出ている。それに加えて、試合中の判断が素早い。先日行われたバルセロナとのヨーロッパリーグ決勝トーナメント・プレイオフ2ndレグはその最たる例で、0‐1とリードされて迎えたハーフタイムにFWボウト・ベグホルストを下げてアントニーの投入を決断。ベグホルストが思うように攻撃へ絡めていなかったのは確かだが、すぐさまアントニーとの交代を決めたテン・ハーグの決断は早い。
しかもアントニーは期待に応えて決勝ゴールを記録。テン・ハーグの交代策は的中し、チームはベスト16進出を決めた。
英『The Sun』によると、今季マンUでは途中出場した選手が19ゴールも奪っている。これは5大リーグでは最多の数字となっており、2位はナポリ&ビジャレアル(17ゴール)だ。セリエAで首位を走るナポリも指揮官ルチアーノ・スパレッティの采配が絶賛されているが、テン・ハーグも負けてはいない。
特に同メディアが注目したのは、このランキングのTOP10に他のプレミアリーグクラブが1つも入っていないことだ。交代策だけで指揮官の優劣を決めることはできないが、テン・ハーグが今季のプレミアリーグで1、2を争う手腕を発揮しているのは間違いない。
大胆かつ的確な交代カードといえば、どこかマンUの伝説的名将アレックス・ファーガソン氏を思わせるところがある。さすがにまだファーガソン氏との比較は早すぎるが、テン・ハーグはオールド・トラッフォードに自信を取り戻してみせた。今は相手にリードされても、ひっくり返せると感じているサポーターも多いのではないか。その感覚こそ強いマンUが戻ってきた証であり、テン・ハーグの指揮官就任はクラブ復活への正しい一手だったと言えそうだ。