チェルシー“11年前の奇跡”のCL制覇 ドログバ、トーレスらで起こしたミラクルの再現はあるか
激闘を制した11年前のチェルシー photo/Getty Images
今季そのミラクルは起きるか
チェルシーに2011-12シーズンの再現は起きるだろうか。
当時のチェルシーはリーグ戦を6位で終えており、国内ではなかなか調子が上がらなかった。それは現在10位に沈んでいる今季との共通点と言える。
だが、当時のチェルシーはシーズン途中より指揮官に就任したロベルト・ディ・マッテオの下でチャンピオンズリーグ制覇を達成。それも決勝トーナメントはミラクル続きで、多くの人がチェルシーの優勝は予想していなかったはずだ。
ベスト16ではナポリ相手にアウェイでの1stレグを1-3で落としていたが、2ndレグでは延長戦の末4-1と大逆転勝利。ここからが快進撃の始まりだった。
英『90min』が当時を振り返っているが、ディ・マッテオは何も失うものがなかったと語る。
「興奮したね。失うものはほとんどなかった。私は暫定的な指揮官だったし、あの状況を最大限に活かそうと考えていたんだ」
準決勝のバルセロナ戦もミラクルだった。連覇を狙っていた最強集団バルセロナ相手にホームで1-0と先勝したものの、アウェイでの2ndレグは先に2点を奪われる苦しい展開に。しかもDFジョン・テリーが退場処分となってしまい、10人での戦いを強いられた。
ところがチェルシーは前半終了間際にラミレスのゴールで貴重なアウェイゴールを奪うと、後半アディショナルタイムには当時最大のハイライトとも言えるフェルナンド・トーレスの独走ゴールでフィニッシュ。味方のクリアボールを拾ったトーレスが相手ゴールまで駆け抜けたシーンは伝説で、なかなか見られぬ光景での勝利だった。
「私たちは彼らの弱点に注目していたんだ。どのチームにも弱点はあるものだ。当時ならばダニエウ・アウベスは素晴らしかったが、頻繁に攻撃参加する彼の背後にはスペースがあった。1stレグでのゴールはそこからだ。2ndレグでは、守備面の準備をした。それがバルセロナに対して出来ることのすべてだからね」
「ハーフタイム直前にゴールを決めたが、決定的な瞬間だった。バルセロナはリラックスしていたに違いない。ラミレスの美しく、重要なアウェイゴールだった」(ディ・マッテオ)
そして決勝のバイエルン戦では、何とチャンピオンズリーグ初出場だったライアン・バートランドを左サイドハーフに抜擢。単なる偶然が重なったわけではなく、ディ・マッテオがきっちりと準備してきたからこその優勝だったのだ。
「バートランドは驚いていたけど、幸せだったと思うよ。当時はそれが思いつく限りの最高のバランスだった。彼はアシュリー・コールのことをよく理解していたから、互いのポジションを入れ替えることができた。アシュリーは前へ行くのが好きな選手だから、そこをライアンにカバーしてもらった。逆のことも出来たしね。決勝までに何人かテストしてみたが、ライアンが自然とフィットしたんだ。リスクでもなかったよ。ギャンブルとの声もあったけど、そうではない。非常に理に適っていた」
決勝はPK戦までもつれたが、チェルシーはバイエルンに35本もシュートを打たれている。それを懸命に防いでの勝利で、当時のチェルシーには不思議な勢いがあった。
今季もリーグ戦では苦戦が続いているが、チャンピオンズリーグでは何とかベスト16でドルトムントを退け、ベスト8進出を決めている。最終ラインではウェズレイ・フォファナも復帰し、守備力は決して悪くない。得点力不足に苦しんでいるのは事実だが、こうした短期決戦では守備の安定が最大の強みになることもある。
シーズン途中にグレアム・ポッターへと指揮官が代わっていることも共通点ではあるが、チェルシーは再びミラクルを起こせるだろうか。国内リーグで苦戦が続いているだけに、チャンピオンズリーグに強い思いを持っている選手は多いはずだ。