[水沼貴史]第二次・森保ジャパンで主軸となるべき欧州組3選手 北中米W杯での飛躍を目指して

水沼貴史の欧蹴爛漫077

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コロンビア戦ではキャプテンマークを巻いてプレイした板倉 photo/Getty Images

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リーダーシップを発揮する板倉

水沼貴史です。熱戦が繰り広げられたカタールW杯の閉幕から早いもので3ヶ月……。2026年の北中米W杯へ向けて、ついに第二次・森保ジャパンが始動しましたね。中盤から前線にかけては顔馴染みの選手たちが多く招集されましたが、守備陣は新しい選手たちが多く選ばれました。今回の招集メンバーを見ると、後ろをフレッシュにしつつ、攻撃の部分でより自分たちが主体性を持ってやれるようにしようとしているのかなと思いました。最終的にはさまざまな世代の選手たちを融合させていくのかもしれませんが、世代交代にチャレンジしているのも見て取れます。そこで今回は、第二次・森保ジャパンにおいて、チームの主軸として私が特に期待している3選手に関してお話をしたいと思います。

1人目は、新たな選手たちが多く招集された守備陣の中で、チームを引っ張っていくことが期待される、いや、引っ張っていかなければならない存在であるDF板倉滉です。板倉は2021-22シーズンにドイツの名門シャルケを1部へ復帰させ、今季はボルシアMGへ加入して欧州5大リーグのトップリーグに挑戦。W杯前に負傷離脱する時期もありましたが、ここまでチームの主力としてリーグ戦16試合に出場しています。第21節のバイエルン戦では、絶対王者の撃破に貢献しました。

昨季のシャルケで自信をつけたことで、強豪がひしめき合うブンデスリーガでも堂々としたプレイを見せていますし、なんといってもその安定感が素晴らしい。若いころからビルドアップ能力や足元の技術に定評がありましたが、一方で守備面では少々「緩さ」が見られることもありました。しかし、最近は最後のところでしっかりと身体を張ったり、鋭い危機察知能力を発揮したりするなど、メンタリティの部分も含めてだいぶ変わってきたなと感じています。自分の立ち位置をしっかり理解し、責任感が芽生えてきていることも、プレイや振る舞いに大きな影響を与えているのかなと思っています。
また、代表活動でもカタールW杯では冨安のコンディション不良の影響もあったかもしれませんが、吉田・冨安のツーセンターバックのあいだに割って入り、しっかりと結果を残して高い評価を得ました。所属クラブではリーダー的な振る舞いも見せているのですが、それが今回の代表戦でも垣間見えました。実際にコロンビア戦ではキャプテンマークも巻きましたからね。北中米W杯までの残りの期間でどれだけ化けてくれるのかなと、期待しかありません。センターバックをやる選手は、代表で長い期間チームの中心として活躍する選手が多いです。板倉は現在26歳と、年齢的に見てもちょうど良いと思いますし、しっかりとポジションを掴んでいき、結果を残してもらいたいです。

ゴールこそなかったが、存在感は発揮した上田 photo/Getty Images

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上田は絶対的なストライカーになれる

2人目は、ベルギーで今ノリに乗っているFW上田綺世です。今回の代表活動では2試合とも途中出場でしたが、自身の持ち味は発揮していたと思います。特に、ウルグアイ戦で西村のゴールを呼び込んだニアサイドでの動きは素晴らしかった。私はちょうどこの一戦を日本のベンチ裏のスタンドから観戦していたのですが、彼の最終ラインでの駆け引きや動き出しなどがよく見て取れましたし、かなり上達しているなと感じましたね。

綺世は持ち味は、足元でボールを受けて自分でドリブル突破してシュートを打つタイプではありません。良いところにパスを出してもらった上で、ワンタッチやツータッチでシュートへ持っていったり、華麗な動きだしで相手の背後を奪ったりするのが非常に上手なタイプです。それらが今回の2試合でもよく見られました。それ以外でもポストプレイで三笘などの周りの選手を活かしたり、クロスに対してニアで相手を引きつけてゴール前にスペースを作ったり、空中戦の強さを発揮したりする場面もあり、素晴らしかったと思います。ゴールこそ奪うことができませんでしたが、今季ベルギーリーグでここまで得点ランキング4位タイ(14ゴール)につけている実力は伊達ではないなと感じました。

ダイナミックな動きだしや反転してからのパワフルなシュートなどには目を見張るものがあるので、本当にあとはゴールネットを揺らすだけ。ここまで14キャップを記録し、代表初ゴールは遠いものの、彼の動きを見ていてくれる選手、彼にパスを出せる選手がいれば、日本代表でも絶対的なストライカーになれるだけの素質はあると思います。

ワントップを採用することが多い日本代表において、自分たちが主導的にサッカーをするのであれば、浅野や大然のようなスピードタイプだけでは厳しい場面がある。味方のために前でタメを作れたり、相手を背負えたりもする綺世は貴重だと思います。大然のようなタイプではありませんが、そもそも彼も良いスピードを持っていますからね。日本代表の2列目にはタレントたちが揃っていますし、綺世がシュートまで持ち込む、綺世がゴールを決める「絵」は描けるので、今後のさらなる成長と活躍に期待しています。将来が楽しみで仕方がない選手です。

欧州でも注目を集める三笘 photo/Getty Images

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バルベルデも警戒する三笘

最後は、現在欧州で最も注目を集めている日本人選手。そう、FW三笘薫です。今後の日本代表を語る上で、欠かせない選手のひとりでしょう。今回の代表ウィークでは、ペナルティエリアの角あたりで、15〜20mくらいスペースがあるときの三笘をもう少し見たかったなという思いはありましたが、コロンビア戦でしっかりゴールという結果を残すあたりはさすがです。

あと、ウルグアイ戦でレアル・マドリードでも活躍するMFフェデリコ・バルベルデが、ドリブル突破する三笘を後ろから死に物狂いで追いかける姿も非常に印象的でしたね。やっぱり三笘は、相手に「怖い選手」「コイツに行かれたらやばい」と認識させているんだなと感じましたし、それがはっきりとわかるシーンでもありました。カタールW杯明けからブライトンで公式戦16試合に出場して7ゴール4アシスト。イングランドでの活躍により、それぐらいの選手になったということですかね。生で三笘のプレイを見ると、彼がボールを持ったときのスタジアムの沸き方も違う。多くのファンが彼のプレイや活躍に期待していることも見て取れました。

また、三笘のプレイを見ていると、「オレはこういったプレイヤーだ」という自覚が備わったような気がしていて、自信が見て取れます。この場面ではドリブルで仕掛けていい、この場面では仕掛けちゃダメだという判断も、シンプルにできているように感じます。調子が良いときのドリブラーは、がむしゃらに「オレが、オレが」となりがちですが、しっかりと周りを見ることができていて、パスも選択肢にあるのは素晴らしいことだと思いますね。

最近は、プレミアリーグでも三笘対策を講じるクラブが増えてきています。それを打破するために三笘の駆け引きやオフ・ザ・ボールの動きもどんどん洗練されてきているように感じます。足元でボールを受けてドリブル突破を仕掛けるだけではなく、彼はDFの背後を狙う動きも頻繁に入れていますからね。ただ、今回の代表戦では良いタイミングで動き出しても、ボールがなかなか出てこないシーンが見受けられました。今後の課題を挙げるとするならば、三笘を活かすために、どのようにして彼が一番輝ける場所でボールを渡すかでしょうか。

北中米W杯へ向けてチーム作りをしていく上で、三笘は間違いなくチームの中心になってくるはず。ただ、先にも述べたように、日本代表の2列目にはタレントが揃っています。まだ先は長いので、三笘を脅かすような選手もしっかり出てきてほしいですね。

今回挙げた3選手を含めて、今の日本代表にはヨーロッパのクラブで主力としてプレイしている選手が多くいます。Jリーグで活躍している選手、またパリ五輪世代にも素晴らしい才能を持った選手たちがいます。自チームで得た自信をそのまま日本代表に還元して、より良い競争力を生み出し、より強いチームを作り上げていってほしいです。

それでは、また次回お会いしましょう!

水沼貴史(みずぬま たかし):サッカー解説者/元日本代表。Jリーグ開幕(1993年)以降、横浜マリノスのベテランとしてチームを牽引し、1995年に現役引退。引退後は解説者やコメンテーターとして活躍する一方、青少年へのサッカーの普及にも携わる。近年はサッカーやスポーツを通じてのコミュニケーションや、親子や家族の絆をテーマにしたイベントや教室に積極的に参加。YouTubeチャンネル『蹴球メガネーズ』などを通じ、幅広い年代層の人々にサッカーの魅力を伝えている

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