パトリックは古巣から決勝点…… 京阪ダービー彩った3つのゴール、その裏にあった想いとは

パトリックは古巣相手にゴール(画像はイメージ) photo/Getty Images

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2-1で京都の勝利に

 スタジアムのある京都府亀岡市への公共交通機関はJR嵯峨野線を利用することになる。ただこの沿線には日本随一の景勝地である嵐山、更に人気の映画村のある太秦と人気スポットが点在。そのおかげか電車の車内は通勤ラッシュ並みの混雑だった。しかし大半の乗客が嵐山で下車することなく、そのまま亀岡まで乗り続けていた。観客は1万3463人と京阪対決への期待が窺えた。

 現在2連敗中の京都と前節ようやくリーグ戦で初勝利をつかんだG大阪。ともに浮上のきっかけにしたい試合だった。まず22分に京都がリーグ戦では約2カ月ぶり先発のFW豊川のゴールで先制する。

「先制点はフリアン・アルバレス(マンチェスター・シティ/アルゼンチン代表)のイメージ。えげつないくらい走る選手で、彼のプレイをイメージしながら練習していました。仲間を信じて、あそこで足を止めない。今までならゴール前で足が止まってしまうというか、待っている場面が自分の中で多かったのですが、できるだけ足を止めずにプレイすることがうまく生きたと思います。あとは合わせるだけ。(井上)黎生人があそこへボールを出してくれたことに感謝ですね」
 G大阪の逆襲は37分、宇佐美とのポジション争いを続けるMF石毛のゴールで同点に。こぼれ球を狙いすました、まさにゴラッソと呼ぶに相応しいものだった。

「力は入れていないです。ミートだけ、ボールを枠の中に抑えるということだけを考えて打ちました。最初はあそこでマイナスのボールを受けて、フリーだったのが分かっていたのでミドルを打ちたかったのですが、(ゴール前にボールを上げた)ファン・アラーノの立場からしたらするとクロスを上げたくなるのは分かるので、上げた場合にはボールがこぼれてくればいいなと思って待っていました」

 「自分的にはのびのびやれて、充実感を感じています。この流れを崩さないようにしたい。勝てなかったのは悔しい。(交代後は)相手のひとつ目のプレッシャーがはがせず、もどかしい気持ちで見ていました。監督のやりたいことと自分のやりたいことが似ていると思います。自分が動くことでここのスペースが空くとかを意識しながらプレイしています」

 宇佐美との激しいポジション争いが続いていることには「宇佐美君という存在がこのチームでどういうものかを分かっている。だからサブでいいかとは思っていない。やっぱり自分が出てるという気持ちを持っていないといけないし、自信はあるし、今日は結果がついてきたと思います」。

 両者拮抗した戦いの中で、後半は徐々にオープンな展開で互いにゴール前でのシーンが増える。最後にゲームを決めたのはホームの京都だった。それも昨年まで通算7シーズンにわたりG大阪でプレイしたFWパトリックだった。

 MFパウリーニョがG大阪のCB三浦にプレッシャーをかけてミスを誘発。そこからボールを受けてシュートを狙った。

「あれは準備していました。パウリーニョとはいろんな話をしていましたし、ピッチに入れば自分たち2人が状況を変えるんだという気持ちでした。ああいう状況が起こることは分かっていました。それをきっちり我々が利用できました」

 シュートの場面は「1発目のシュートを打ったときは上に行ってしまったので、次は違うところへ打ちました。とにかくゴールにねじ込みたかったし、GKに当たっても何でもいいので入ればよかったです」。

 「G大阪がビッグチームであることは分かっていますし、そういう相手に僕たちは素晴らしい戦いをしたと思います」

 ゴール後のパフォーマンスは非常に抑え気味だったことに関しては「(G大阪は)自分が長くいたチーム。今は京都の選手なので、京都サポーターも多くの力を与えてくれています。彼らのためにも喜ぶべきところもありましたが、相手チームのことも考えて、ああいうものが一番良い行動だったと思いました。お互いのサポーターへのリスペクトです。先発を外れたことも、まったく問題ありません。なぜならこのチームは京都サンガであって、チーム・パトリックではありません」。

 G大阪との対戦には自分には価値があることを示したという思いがあったのではという問いには「自分は京都でやっていて、今の京都の価値を作るためのことをやっています。G大阪のことは過去のこと。現在のチームで価値を示す。相手にまだまだできることを示すことではなく、京都での価値を示すことだと思います」と答えた。

 3つのゴールがうまれ、ホームチームの勝利に終わった。サポーターの立場からすれば勝敗に納得がいかないところもあるかもしれないが、ともに自分たちの時間帯を作り出し、持ち味を発揮した好ゲームだった。帰りの電車はサッカーのおもしろさで充実感に包まれたものだったかもしれない。


文/吉村 憲文

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