自殺例もある挫折したアカデミー生たちを助けたい…… A・アーノルドが立ち上げた事業とは

リヴァプールのA・アーノルド photo/Getty Images

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夢やぶれた若者を救う

プロサッカー選手は、幼少期にサッカーをしている子なら誰もが憧れる職業だ。プロリーグの最高峰プレミアリーグが行われるイングランドでは、現在150万人の若き選手がアカデミーのユースチームでプレイしているという。『BBC SPORT』によると、その中でプロサッカー選手としてプレイできるようになる選手は約180人と、全体のわずか0.012%。また、アカデミーで日々励んでいる4分の3が13歳から16歳の間に退団を余儀なくされるという。プロを目指し、それだけのために多くのことを犠牲にして頑張っても、努力が報われない少年少女が多くいる厳しい世界だ。

そんな若者に次の人生を提供する事業、The After Academyをリヴァプールのスター選手、トレント・アレクサンダー・アーノルドが立ち上げた。A・アーノルドは6歳の時にリヴァプールのアカデミーに入団してから、2016年に彼が18歳でトップチームデビューするまでの道のりを、『BBC SPORT』の取材でラッキーだったと語った。

彼も人知れない努力と磨き上げた才能でここまで上り詰めたことは間違いないだろう。しかし、彼がアカデミーにいる頃、一緒に頑張ってきた同僚が退団しなくてはならない場面を何度も見たという。退団を告げられた少年たちは、皆サッカー選手になる夢が途絶えたことに嘆き、路頭に迷う子も多く、A・アーノルドはその問題を解決したいと考えたのだ。

ひとつ悲劇的な例が紹介されている。マンチェスター・シティのユースでプレイしていたジェレミー・ウィステンは、シティから退団を告げられた後、18歳の時に自殺した。彼の死は、イングランドのサッカーアカデミーのシステムに存在する問題を明らかにしたという。その事件もあり、今季プレミアリーグは、21歳未満でアカデミーから解雇されたプレイヤーに3年間のアフターケアの必要性があるというガイダンスを発行した。

A・アーノルドが立ち上げたThe After Academyは、そんな悲惨な事件を起こさないために、アカデミーを退団になった少年少女に雇用機会を提供するなど、新たな人生を歩き出すきっかけを与える事業だという。彼はインタビューで、どこにも頼ることができない若者たちを救うセーフティネットの必要性、挑戦する若者たちの気持ちを語った。

「僕たちは商品ではない。単に大きな組織の部品として動いているわけでもない。しかし僕たちは、たとえそれが小さなチャンスでも、それを得るために若いうちに多くのことを犠牲にしているんだ」

幼少期からアカデミーの選手として成長し、順風満帆のキャリアを歩んでいるA・アーノルド。しかし彼はそれをラッキーだと語り、そんな人生を歩めなかった多くの若者たちに手を差し伸べようとしている。彼の行いが、多くの人の光になることを願いたい。

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