過密日程の最中にある浦和は上位に食らいつくためにはどうしてもこのアウェイ戦でも勝利が必要になる。しかしこの試合では京都の前線からのプレッシングに特徴であるビルドアップを完全に封じられることになってしまった。セットプレイからの2得点で勝利を手繰り寄せることに成功したが、スコルジャ監督は相手への称賛を惜しまなかった。
「今日の試合は浦和におめでとうといいたいですが、京都も非常に良いプレイをしたので称えたいと思います。非常に強いプレスを掛けられ、我々はかなり苦しみました。ビルドアップは用意してきましたが、その(京都の)プレッシャーの下であまり実行することができませんでした」
浦和を押し込んだ京都。結果的にはこれでリーグ5連敗、7試合未勝利となった。しかしその戦いぶりに試合後ホームのサポーターからは拍手が送られた。試合内容は決して悪くはない。いやむしろ胸を張っていいものだった。
曺貴裁監督は「浦和が後ろで隙をうかがいながら、ボールを回しているところへ圧力を掛けていけば、同じようなパス数で京都のほうが良いところが出るという確信がありました。試合はそのように進んだと思います。ただ最後のゴールに迫るチャンスは何回かありました。そこでボールが枠に飛ばないことを嘆いても仕方ありません。道の先が真っ暗で何も見えない状態ではないと思っています。その光に向かって進み、必ずこの状況を乗り越えたいです」としっかりと前を見据えた。アジア王者を押し込み、チームとしてのコンセプトが体現できたことに手応えを感じているようでもあった。
ただ日本代表に選出された川﨑のミスに対しては非常に厳しい言葉を並べた。試合を通じて高いパフォーマンスを発揮したものの、不用意なたったひとつのプレイがチームを厳しい状況に追い込んでしまった。
「今厳しく言いました。ロッカーで。代表に選出されたことは本人も良く分かっていると思います。W杯でそういうプレイをするのかと」
最初の失点は自陣ゴール前で川﨑が中途半端なプレイでファウルを犯し、このFKのこぼれ球を興梠に決められたものである。
「川﨑楓太、川﨑楓太といっても彼は芸能人ではなく、彼がまとめているチームではない。チームメイトや先輩から学んでチームを代表して(日本代表へ)いくと思うのでサッカー人生で一番忘れてはいけない。彼の長いサッカー人生で、自分のミスで試合に負けた、それも代表に選んでもらったすぐ後にということで何かの道しるべだと思います。若い選手はリスクを冒す権利がありますが、あのプレイはリスクを負ってやったことではないと思います。リスクを冒さない中でやったこと。京都らしくもないし、川﨑らしくもないと思います。肝に銘じてチームでキャプテンシーを示して欲しいと思います」
ミスを反省し、しっかりと自分に向き合うことを要求した。
試合後、一番最後にミックスゾーンに現れた川﨑だったが「自分たちのサッカーができていたと思うし、集中したゲーム展開の中でああいうミスから失点したのは反省しかありません。僕が謝ってすむ問題ではないですけど、正直悔しさでいっぱいでした」。
「自分がもっとシンプルにクリアしていればよかったと思うし、それ以外のところは自分たちが勇気を持ってボールを奪えました。つぶせたと思います。自分が失点を招いてしまったのは次に改善しなくてはならないと思います」
「ミスを恐れて消極的になっては意味はない。攻撃的なサッカーをしながら、絶対ミスしてはいけないところはミスしてはいけない。自分たちのゴール前ですべきプレイと相手のゴール前ですべきプレイは違うと思います」
ロッカールームで投げかけられた言葉には「(監督に)いわれる前に自分の責任だと思っていました。心で思っているのと、実際に言葉にするのは重みが違うと思います。チームを勝たせるために何ができるかを今から考えていきたいと思っています」。
なぜあのプレイを選択したのかとの問いかけには「最初ヘディングでつなぎたかったんですが、相手にパスコースを消されて取り敢えず自分たちのボールにと思って選択しました」。
日本代表の森保監督が視察に訪れた試合だったが「あまり日本代表に選出されたとか考えないようにしていました。まずは浦和戦がすべてだと思ってプレイしましたが、正直不甲斐ない気持ちがあるし、多少は影響しているかなって思います」。
試合後、森保監督は囲み取材で次のような言葉を残した。
「(川﨑は)試合にも出続けてますし、パフォーマンス的にも代表のメンバーの中に入って、自分のプレイを出すことができるかなということと、まだまだ伸びしろがあると思いますし、これからの選手だと思いますので。A代表の中で刺激を受けてもらって、今後の成長につなげてもらうようにしてもらえれば」
成長への糧というには大きすぎる代償だったかもしれない。しかしミスをせずに代表に上り詰めた選手は誰もいない。恐れず次につなげられるか。今後その真価が試されることになる。
文/吉村 憲文