「加藤に関してはルヴァンカップのハーフタイムで違和感を訴えました。検査の結果、若干の出血があったので、今は復帰に向けてトレーニングしているところです。それに伴い上門という選択肢もあったのですが、彼も体調不良で、昨日もギリギリまでメンバーに入れるかどうかといった状態でした(※結果先発を外した)」
試合後の記者会見で小菊監督は苦しい台所事情を明かした。その上でここ数試合結果が出ている[4‐4-2]を踏襲するなら、誰が適任かを考えたという。
「奥埜は攻守に関われて素晴らしい選手ですし、今日は2トップという形にしながらも、彼には香川と鈴木の中継もしてもらいながら、レオ・セアラとの2トップとしての役割、タスクも与えました。彼の攻守に渡る貢献度は、ポジションを変えても素晴らしいものでした」
奥埜自身も「攻撃の部分は自分や前線の選手の立ち位置によって、後ろの選手のビルドアップの助けとか、後ろにスペースを開けてあげることを意識しました。時には少し下がってビルドアップを助けることも意識しました」。
彼のユーティリティぶりが、このチームの潤滑油となり、プレイはより滑らかになる。どうしても香川の影に隠れがちだが、そのプレイは『いぶし銀』という言葉が一番しっくりくる。
開幕戦以来の得点でスポットライトを浴びたのは為田。今季J1の15試合中14試合に先発出場し、完全にレギュラーをつかんでいるが、長らくゴールとは無縁だった。
「取れればいいですけど、全然取れないので。勿論練習はしていますが、チームが勝てているので。あまり高望みをせず、控えの選手にもいい選手はたくさんいるので。僕は僕の役割を果たして、勿論ゴールのところはこだわってはいますが」
「(ゴールシーンは)走りこんでドンって感じだったんですが、うまく(クロスがDFを)越えそうな感じがありました。走りこんで叩くことを意識した分、自分の中で(DFとの)空間を空けていたので、越えてきた時にうまくヘディングを当てられたと思います」
普段の地道な取り組みが結果につながったのかもしれない。小菊監督は育成畑が長かったこともあり、選手に努力を評価する目は確かなものがある。
これでルヴァンカップを含めて公式戦4試合を連続完封したC大阪。その立役者のひとりがCBの進藤である。開幕当初は控えだったが、先発起用されて以降完璧な仕事を見せている。文字通り縁の下の力持ちとして、最終ラインからチームを支える存在だ。
「鳥海も私が監督になったときは苦労していた選手ですし、進藤も同じです。競争があった中で、彼らがしっかりと自分に矢印を向け努力した成果が高いパフォーマンスでチームの柱として君臨している現在の姿です。彼らの日々の努力の賜物だと思いますし、あらためて感謝の気持ち、リスペクトでいっぱいです。これからヨニッチも復帰し、西尾もいます。他にも素晴らしい選手がたくさんいます。競争しながらひとりひとりの成長をサポートしていきたいと思います」
小菊監督は最終ラインの選手の激しい競争を歓迎した。
当の進藤は自身とチームのパフォーマンスについてこう語った。
「ピンチがないわけではないんで、自分たちでコントロールできるところはしっかりやれているとは思います。隙がないかというと、裏に走られたりスライドが一瞬遅れたりとかあるんで、そこは一個一個映像で確認して失点の確率を下げる作業をしたいですね」
「相手のFWとの駆け引きだったり、今日はレベルの高い小川選手という高さやゴールキックの競り合いとか、入り方とか身体能力の高さとか。難しさを感じることができましたね。そういう難しい相手とやりたいので。試合を重ねて色んな相手とやりたいですね」
「監督は競争を望んでいるでしょうけど、僕は競争はしたくないですね(笑)。最低限の結果は出せているとは思います。いずれ無失点記録は止まると思うので、重要になってくるのは傷口を広げないこと。勿論ゼロを目指しますが、相手があることなので難しいことだと分かっています」
「基本的に誰とでも合わせられるし、鳥海選手もそういう選手。連携の難しさはまったく感じないです。ただふたりとも余っていて、1枚のFWにいけないというシーンもあったりするので、細かいことですがまだまだ改善できますね。後ろで僕と鳥海選手が2枚残って小川選手や山下選手とかにボールがこぼれた時に(アプローチに)いけなかったりは避けたかったです。そこが失点の大きな要因になりそうだったので。(試合中)本当にうるさくいいました。すべてが上手くいったわけではないですが」
完封できたことを手放しに喜ぶよりも、更なる修正点を見つけ、より高いレベルに。そしてこれはDFラインの話だけでなく、今のC大阪のどのポジションについてもいえることだ。
タイトル奪取を掲げて挑んだ今季。序盤は大きく躓いたものの、[4‐4-2]を選択して以降徐々にパフォーマンスは安定を見せ始めた。
「選手たちにも伝えたのですが、課題はあるので、これからトップ3に入る、優勝争いをしていくためには、ひとりひとりが、そしてチーム全体が、もうひとつ突き詰めて、クオリティを上げていく、強度を上げていく、戦術理解を深めていく、そういったことも必要になってきます。ここで満足せず、次からの名古屋戦、神戸戦に向かっていきたいと思います」
小菊監督は言葉に力を込めた。
文/吉村 憲文