[名良橋晃]U-20W杯で世界との差を痛感 この経験を無駄にしないためにも危機感を持ってプレイを!
U-20W杯へ臨んだ日本代表 photo/Getty Images
「プレイの強度」と「適応力」 もっと勇気を持つことができれば
アルゼンチンで5月20日から約3週間にわたって激闘が繰り広げられてきたU-20W杯ですが、ついに大会の幕が閉じました。頂点に立ったのは南米のウルグアイで、イタリアを退けての優勝でした。そして、今大会を通じて私が感じたのは「プレイの強度」と「適応力」。グループリーグで敗退することとなった日本にとっては、これらがキーワードとなった大会だったのではないでしょうか。
日本はグループリーグ初戦のセネガル戦こそ勝利(1-0)しましたが、第2戦のコロンビア戦と第3戦のイスラエル戦はいずれも逆転負け(ともに1-2)を喫しました。大会へ臨んだ21名のメンバーほぼ全員を高校生のときから知っている私としても、今大会への期待が大きかったぶん、ショックも非常に大きかったです。見ている私がこれだけ歯痒かったのですから、選手にとっては非常に悔しい結果だったと思います。
各国代表を見ていると、サッカーの本質でもある「プレイの強度」がシンプルにチームのベースにあって、日本とは大きな差があるなと感じました。選手だけの問題ではないですけど、試合運びだとか、相手の圧に耐えられる耐久性だとか、スタッフも含めて「適応力」も日本には足りなかったのではないかなと感じています。
この世代は、コロナ禍の影響によって国際舞台での経験が少ないです。確かに適応力をつけるには、経験がモノをいうかもしれません。でもこの世代の経験が少ないのは他の国も同じなんです。これは結果論になってしまいますが、選手もそうですし、スタッフもそうですし、もっと勇気を持ってアグレッシブに試合を進めることができれば、また違った結果になっていたのではないかなと思いました。日本はアジア・ベスト4でのW杯出場ということで、グループの中では一番下からの挑戦でしたし、よりチャレンジをして欲しかった。1点リードしてもすぐに守り切ろうとするのではなく、もう1点取りに行くよという姿勢が見たかったです。そこらへんで少し物足りなさを感じましたね。
果敢にシュートを放ったり、力強いドリブルを見せたり、積極的な姿勢を見せた松木玖生 photo/Getty Images
貪欲さや泥臭さが足りない 技術以外の部分の成長を
日本はよく相手を綺麗に崩そうとするんですが、それが今大会でもマイナスに出てしまったように感じます。綺麗に崩すという意味では、セットプレイに関していえば良かったと思います。3点中2点がデザインされたセットプレイから生まれたものでしたし、練習でチームに落とし込んだものがしっかり試合で発揮できていました。そういうところのディティールというのは出せていたと思いますし、いい成功体験にもなったと思います。ただ、厳しい言い方になってしまうかもしれませんが、全体を通してみると、世界に対してやれていたのはその部分だけだったのかなとも思います。
どんな形でも1点は1点です。もちろん、こういった戦術や対策は大事なのですが、世界のチームは形にとらわれすぎず、勝つために常にゴールを見ています。そこらへんの貪欲さもプレイの強度や結果に出てしまっていたかなと思います。
守備面を見ても、優勝したウルグアイなどはボールを奪いに行く貪欲さが素晴らしく、球際の強度が半端なかったです。彼らは相手に寄せてプレッシャーをかけるだけではなく、足ごと刈り取ってやるというような勢いでボールを奪い取るんですよ。そこからのカウンターひとつとっても、日本とウルグアイでは迫力が全然違いました。ウルグアイは1点リードした終盤でも、カウンターに5枚ぐらいの人数を割いてもう1点を奪いに行っていましたからね。彼らからはそういう圧を感じられました。
10人のイスラエルに逆転負け。肩を落とす選手たち photo/Getty Images
日本の選手たちの一つ一つの技術やポテンシャル自体は、すごく高いです。しかし、少し雑でも相手を強引にこじ開けに行くだとか、グイグイ行って相手を嫌がらせるだとか、戦う姿勢が他の国に比べてあまり見られませんでした。現代サッカーの上手い選手の定義は、技術があるということだけではなく、走れて戦える選手でなければなりません。こういった選手が今は求められていると思いますし、日本はこういった根本的な部分をから変えていかなければ、世界の差は広がってしまうと感じました。勝つためには、もっと泥臭くという部分を全面的に押し出してもいいのかなと思いました。技術以外の部分の成長がより必要となってくるかもしれません。
選手にとっては、本当に悔しさしか残らなかった大会だと思います。22年ぶりにグループリーグ敗退でしたし、日本サッカー界に関わるすべての人が危機感を持たなければいけないと思います。みんなでゼロから這い上がっていくしかないでしょう。
また、このU-20世代はパリ五輪を目指す上で、ひとつ上の世代(現U-22代表)に食い込んでいかなければなりません。世界を見ると、この年代からA代表として活躍している選手もいます。これで終わりではないですし、大事なのはここからです。この悔しさを繰り返さないためにも、いつの日かU-20W杯の3試合があって良かったと言えるためにも、責任と自覚を持って今後はプレイしてほしいですね。私自身も現役時代は悔しい経験が未来へのバネになりましたし、今の若い子たちは本当に素晴らしいポテンシャルを備えているので、今回の経験を決して無駄にはしてほしくないなと思っています。
文/及川 裕太
電子マガジンtheWORLD(ザ・ワールド)282号、6月15日配信の記事より転載