[西岡明彦]増加する差別行為 プレミアから差別はなくなるのか

プレミア最強ガイド #104

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ソン・フンミンも5月のクリスタル・パレス戦でスタンドから差別的ジェスチャーを受けたという photo/Getty Images

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 差別行為の撲滅を目的に活動している“キック・イット・アウト”キャンペーン。先日、同団体が2022-23シーズンに発生した差別行為の詳細を発表しましたが、増加傾向にあることが分かりました。

 昨シーズン、プロフェッショナルの試合、グラスルーツ、ソーシャルメディアなどで発生した差別行為の報告は1007件、前年と比較して65.1%増加しました。そのうちの49%が人種差別に該当しており、女性蔑視や性差別に関する事象が最も増加しているとのことでした。

 キック・イット・アウト CEO のトニー・バーネット氏は、「報告の大幅な増加は憂慮すべきことであり、我々はあらゆる分野で差別に立ち向かう決意を強めている。この統計の裏には、悲しいことに差別を経験した人の存在があり、虐待の被害者を支援することがキック・イット・アウトの最優先事項であり続けている。差別的行為に対する寛容性が低く、虐待行為を放置せず報告することがさらに定着すれば、差別を監視する一定のメカニズムを推奨することに繋がるはずだ」と、さらなる協力や支援を呼び掛けています。
 報告数は4シーズン連続で増加しており、ファンからの通告が増えているとのこと。報告数の区分けでは性差別と女性蔑視の報告数が前年の16件から80件に、そのうち女性選手に対する誹謗中傷が3シーズン前の1件から46件と、最も増加した事象になりました。一方で、信仰宗教に関する差別のリポートでは、反ユダヤ主義に対する報告は減少したものの、イスラム教を揶揄するチャントや差別発言が増加しているとのこと。まだまだ宗教差別も根絶には至っていないようです。

 プレミアリーグを始めとするプロリーグ、国内及び欧州カップ戦などにおける報告は全体の27%にあたる484件で、同キャンペーンの効果もあり即座に報告が上がることで発覚する事象が多い反面、グラスルーツに関しては156件の報告があったものの、U-18などアンダーカテゴリーの試合で発生した差別に関して報告に至らない事象も数多く残されていると同団体は警鐘を鳴らしています。

 “キック・イット・アウト”キャンペーンによって、ファンの差別に対する意識も理解も深まってきました。黙認しない、声を上げ続けることが、差別行為の根絶に繋がる近道です。今後もこの活動をサポートしたいと思います。

文/西岡 明彦

電子マガジンtheWORLD(ザ・ワールド)283号、7月15日配信の記事より転載

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