[名良橋晃]世代交代が必要な日本代表のSBを考える 横浜FMの永戸を見たい
右は菅原が連続出場 左は伊藤の存在感が増す
現状、菅原が右SBのファーストチョイスとなっている photo/Getty Images
日本代表のサイドバックは、長友佑都、酒井宏樹が長年第一人者として活躍してきました。両名はまだまだ現役ですが、世代交代を考えないといけないポジションです。私自身も現役時代に経験したことであり、これは避けられないことです。
3月の2試合と6月の2試合、合わせて4試合を戦うなか、森保一監督はすべての試合で菅原由勢を右サイドバックに起用しました。菅原由勢は3月のシリーズから日本代表が新たに取り組むサイドバックが内側に入っていく動きができて、縦へ動くスピードがあります。チャンスメイクもできて、前線に飛び出して自分でシュートする積極性もあります。守備における対人の強さもあります。こうした攻守のクオリティを考えると、9月のドイツ戦、トルコ戦でも起用されると考えられます。
右サイドバックの候補として、3月のシリーズでは橋岡大樹、半田陸が呼ばれていましたが、橋岡大樹がわずか数分試合に出ただけです。6月のシリーズでは相馬勇紀が交代出場で右サイドバックを務めましたが、これは攻撃的にいける試合展開になったからだと考えられます。4バックのサイドバックには、やはりある程度の守備対応が求められます。相馬勇紀が右サイドバックを務めているときは守備について明確にするのが難しいです。
今後、森保一監督がどう起用していくのか不明ですが、3月に呼ばれた橋岡大樹、半田陸だけでなく、たとえば山根視来もいます。現状は菅原由勢が信頼を得ていますが、他の選手にもまだまだチャンスがあると思っています。
左サイドバックも多くの候補選手がいます。今年の4試合では伊藤洋輝、バングーナガンデ佳史扶、森下龍矢がプレイしましたが、ケガのためカタールW杯に出場できなかった中山雄太もいます。6月のシリーズを見ると、攻撃的にいけるエルサルバドル戦に森下龍矢、力のあるペルーとの戦いには高さがあってCBもできる伊藤洋輝を起用しました。右サイドバックと同じく、相手や展開に合わせた起用でした。
そうしたなか、伊藤洋輝はミドルシュートを決めて存在をアピールしました。とはいえ、まだまだ森保一監督は各選手をどう起用するか見ていると思います。いまはいろいろ試せる段階で、いまの日本代表はサイドバックが内側に入って組み立てるスタイルにチャレンジしています。周りでプレイする選手との組み合わせも含めて、森保一監督をはじめとする代表スタッフはいろいろなことを想定しているでしょう。左サイドバックに関しても、まだ呼ばれていない選手にも間違いなくチャンスがあります。
一番見たいのは永戸 黒川、半田も面白い
日本代表入りが期待される永戸は、精度の高い左足を持つ photo/Getty Images
何度か名前を上げさせてもらっているのですが、個人的には横浜FMで左サイドバックを務める永戸勝也を一度は日本代表で見てみたいです。純粋な左利きで、キックの精度がとても高い。前方に仕掛けるパワーもあり、攻撃にアクセントをつけられます。
なにより、内側に入っていく偽サイドバックの動きができます。ピッチの中央でボールに関与し、組み立てることができる。チームも調子が良く、3月、6月のシリーズでは呼ばれるのではとも思っていました。ただ、日本代表はオールスターではなく、実際にはいろいろな判断材料があります。それでも、“見たい”という意見はあってもいいでしょう。私がいま日本代表で一番見てみたいのが永戸勝也です。
同じ左サイドバックでは、G大阪の黒川圭介も推したいです。開幕戦からスタメン出場し、代えがきかない存在となっています。チームの調子もジワジワと上がっており、好調な名古屋から森下龍矢が呼ばれたことを考えると、黒川圭介にもチャンスがありそうです。
左利きで足元のうまさがあり、ドリブルでボールを前方に運ぶ推進力もあります。ゴールする力もあり、第18節鹿島戦では逆足となる右足で得点しています。試合出場を重ねることで、守備での粘り強さも出てきました。黒川圭介も一度日本代表で見たいですね。
右サイドバックでは3月のシリーズですでに日本代表入りした半田陸に注目しています。海外移籍の噂もあるなか、確実にG大阪のサッカーに馴染んできています。昨季まで山形でプレイしていましたが、山形はサイドバックが中央に入って組み立てるスタイルで戦っていたので偽サイドバックの動きがスムーズにできます。
半田陸はパリ五輪世代であることから、今後はアンダー代表がベースになってくるかもしれません。どんな経歴を歩むかわかりませんが、ゆくゆくは日本代表の中心になってほしい選手です。
日本代表は9月に欧州でドイツ、トルコと強化試合を行います。いまのドイツは不調ですが、カタールW杯で敗れている日本代表が相手となれば死に物狂いで勝ちにくるでしょう。トルコ戦も含めて注目度が高いなか、この2試合に向けて森保一監督がどんな選択をするのかサイドバックの人選だけでも楽しみです。
さらに、10月には新潟と神戸で強化試合が開催されます。招集人数には限りがありますが、新潟での一戦では伊藤涼太郎が見られるといいですね。そのために、移籍したシント・トロイデンでしっかりと結果を出してほしいです。伊藤涼太郎がサムライブルーのユニフォームを着てビッグスワンに凱旋する。ストーリー性があっていいと思います。
構成/飯塚 健司
電子マガジンtheWORLD(ザ・ワールド)283号、7月15日配信の記事より転載