絶対に昨季と同じ轍を踏めないチェルシー ポチェッティーノのもとで汚名返上なるか

水沼貴史の欧蹴爛漫081

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ポチェッティーノはチェルシーを蘇らせることができるのか photo/Getty Images

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まずはチームとしての一体感を取り戻したい

水沼貴史です。欧州各国リーグの2023-24シーズンが続々と開幕しており、11日にはプレミアリーグの新たな戦いも幕が開けますね。近年圧倒的な力を見せてきたマンチェスター・シティが史上初のリーグ4連覇を成し遂げるのか、はたまた彼らを止めるクラブが現れるのか……。新シーズンもプレミアリーグの見どころはたくさんあります。新生・チェルシーが昨季の汚名を返上できるのかも、見どころのひとつでしょう。そこで今回は、そんなチェルシーについて、少々お話をしたいと思います。

昨季のチェルシーは、プレミアリーグで勝ち点を「44」しか積み上げることができず、12位でフィニッシュ。何度も監督交代を敢行し、最後はクラブのレジェンドであるフランク・ランパードに託すことで、なんとかシーズンを終えることはできましたが、シーズン通してチームの一体感というものがあまり感じられませんでした。チェルシーとしては信じられないような、誰の目から見ても苦しいシーズンだったと思います。昨季の補強を見ても、あれほどのスター選手たちを獲ってきたはいいものの、選手数が飽和状態となってしまい、うまく機能せず。チーム作りの難しさも、垣間見れたシーズンだったと思います。

新シーズンは絶対に同じ轍を踏めない。そんな中で、チェルシーの未来を託されたのが、プレミアリーグ経験が豊富なマウリシオ・ポチェッティーノです。彼はパリ・サンジェルマンの指揮官も務めましたし、よく言えばビッグネームをコントロールできる人だと思います。ただ一方で、やはりチェルシーの指揮官はある程度「名前のある人」ではないと、やはり落ち着かないのかなも思いました。昨季半ばに招聘したグレアム・ポッターが苦戦したことから見てもわかる通り、チェルシーの指揮官においては戦術的に云々かんぬんではなく、まずは選手をしっかり掌握して、うまくまとめることがチームの力を発揮する上で一番大事な気がします。
実際にこれまでのプレシーズンマッチを見ていても、選手に対するコミュニケーションの取り方に気をつけながら、ポチェッティーノが必死に選手たちとやり取りしているのがわかります。今はまだ選手たちのパーソナリティをしっかり理解し、自分自身がどのようにマネージメントして、どうチームへ反映させていくのかという段階かもしれません。ただ、簡単ではない仕事でしょうが、それがうまい方向へ変わっていけば、今季のチェルシーは昨季のような失態を犯す可能性は低いのではないでしょうか。能力が高い選手たちは揃っていますからね。今季はチームの一体感を持ってシーズンを戦い抜いてほしいです。

新たにキャプテンマークを託されたリース・ジェイムズ photo/Getty Images

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多くの主力選手たちがチームを去ったが……

選手に関して言えば、DFセサル・アスピリクエタやDFカリドゥ・クリバリ、MFメイソン・マウント、MFマテオ・コバチッチ、FWカイ・ハフェルツなど、今夏に多くの主力選手たちがチームを退団することになりました。先ほども述べたように、チェルシーの戦力は飽和状態であったため、今夏の人員の整理は必須だったと思います。もちろん、今季を戦っていく中で、必要な戦力を見極めた上での放出でしょうし、これらの退団は致し方ないでしょう。

一つ懸念材料があるとすれば、影響力のあったベテランたちや経験豊富な選手たちが多くチームを去ってしまったことですね。絶対的なリーダーであったアスピリクエタ(アトレティコ・マドリードへ移籍)を筆頭に、GKエドゥアール・メンディ、クリバリ、MFエンゴロ・カンテはサウジアラビアへ、コバチッチはマンチェスター・シティへ移籍してしまいました。ただ、変革期をむかえているチームを活性化させるという意味でも、仕方ないことではあります。百戦錬磨のDFチアゴ・シウバがチームに残っていますし、彼が後ろからチーム全体を支える。新キャプテンに就任したDFリース・ジェイムズも、ポチェッティーノからの信頼が厚そうですし、問題はなさそうです。

また、FWクリストファー・エンクンクやFWニコラス・ジャクソンといった勢いのある若手を獲得することができました。クラブの生え抜き選手で、昨季から主力に定着したMFコナー・ギャラガーあたりも、チームに対するスピリットが感じられます。前でも後ろでも、走れて運動量のある選手が多くいるので、残った選手たちで十分結果を残せるのではないでしょうか。開幕直前の怪我でエンクンクが離脱してしまったのは残念ですが、N・ジャクソンはプレシーズンからコンビネーションを含めてかなり良い動きを見せていたので、新シーズンでの活躍にも期待です。

昨季のチェルシーは、なかなかゴールを奪うことができず、38試合で38得点(リーグ15位タイ)にとどまりました。今夏のプレシーズンマッチでは、ブライトン戦で4ゴールを奪い、その他の試合でもノーゴールに終わった試合がありませんでした。昨季の課題を克服するという意味でも、新シーズンへ向けて良いプレシーズンを送れたのではないでしょうか。1月に鳴り物入りで加入したFWミハイロ・ムドリクも、1年目はあまりフィットできずに苦戦を強いられましたが、新シーズンの爆発を予感させるようなプレイをプレシーズンから見せていましたしね。あの才能や能力が化けたら、とんでもない選手になりそうだなと思いました。

昨季はともに苦戦を強いられたチェルシーとリヴァプールが開幕戦で相見える photo/Getty Images

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リヴァプールとの開幕戦はメンタルが重要

そんな中で、チェルシーが開幕戦で相見えるのがリヴァプールです。最終的には復調したリヴァプールと苦しみ続けたチェルシーとで、大きく明暗が分かれましたが、昨季思うような戦いができなかったビッグクラブの両雄がいきなり激突するのです。昨季の二の舞だけは避けたい両チームということで、立場は同じだと思いますし、開幕戦から激しい戦いになるのではないでしょうか。

チェルシーはホームでの戦いになりますが、戦術云々ではなく、なりふり構わずチャレンジャー精神でやれるかが結果を大きく分けると思います。一番大事なのはメンタルで、ここから是非とも這い上がってほしい。もしリヴァプールを相手に複数点を奪うことができれば、昨季の得点力不足のイメージを払拭し、一気に勢いに乗れるかもしれません。それほど大事な開幕戦になると思いますね。

チェルシーはアスピリクエタ、リヴァプールはジョーダン・ヘンダーソン。ともに絶対的なリーダーが今夏にチームを去っています。新たなリーダーが誰になるのかという意味でも、面白い試合になるでしょう。個人的には、開幕戦も含めて新シーズンは、ギャラガーに注目しています。いきなり完全復活とはいかないにせよ、今季はひとまずトップ4で終えられるか、ファンのみなさんが期待を持ったシーズンを送れるかが、大事になってくるでしょう。

それでは、また次回お会いしましょう!

水沼貴史(みずぬま たかし):サッカー解説者/元日本代表。Jリーグ開幕(1993年)以降、横浜マリノスのベテランとしてチームを牽引し、1995年に現役引退。引退後は解説者やコメンテーターとして活躍する一方、青少年へのサッカーの普及にも携わる。近年はサッカーやスポーツを通じてのコミュニケーションや、親子や家族の絆をテーマにしたイベントや教室に積極的に参加。YouTubeチャンネル『蹴球メガネーズ』などを通じ、幅広い年代層の人々にサッカーの魅力を伝えている

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