[名良橋晃]リスクを恐れずに!なんて簡単には言えない Jの秋春制への移行

お客さんあってのJ 秋春制で集客はどうなる?

お客さんあってのJ 秋春制で集客はどうなる?

山形は現状でも開幕からアウェイでの連戦を強いられている photo/Getty Images

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 春秋制から秋春制へ。Jリーグがシーズン移行を検討しています。いつかは絶対に変更される制度だと考えていたので、私は決して反対ではありません。ただ、メリット、デメリットがあり、いくら考えても良い答えが出てきませんでした。問題点が次々に浮かび上がってきてキリがないのです。

 最後は日本サッカー協会(JFA)、Jリーグがどう考えるかですが、いま各所でヒアリングが行われています。すでに各クラブの監督が意見する場が設けられました。現場だけでなく、運営や行政から意見を聞くことも進められています。

 なにより、サポーターの思いを聞かないといけないですね。お客さんあってのJリーグなので、いろいろな意見を聞くことが大切です。やってみないとはじまらない。動いてみないとわからない。そういう考え方があれば、日本の風土にはやはり現状があっているという考え方もあります。
 秋春制に移行するとどうなるか? 具体的にイメージするためにも、まずは“案”を出してみることだと思います。スケジュールが出てくることで、見えてくるものがあります。

 欧州主要国と同じ8月開幕、5月閉幕という意見もありますが、8月の暑さを考えるとどうでしょうか。プレイ強度を維持するためには猛暑での開催は避けたいところで、理想は9月開幕、5月閉幕ではないでしょうか。

 しかしそうなると、運営的に集客が見込める夏休みに興行が組めません。サポーターとしても家族で観戦するチャンスで、クラブもいろいろなイベントを用意しています。夏休みに家族で出かける選択肢から、Jリーグがなくなる。これだけでも難しい問題です。

 冬季中断の時期も複合的に考えないといけないです。12月中旬から1月下旬まで中断したとして、2月上旬から再開して万全のコンディションで戦えるクラブがどれだけあるのか。雪国のクラブは春秋制のいまでも開幕から3試合、4試合をアウェイで戦っています。 雪国というと北海道、東北、北陸、信州を思い浮かべがちですが、多くの地域で雪が降ります。鳥取なども降雪量が多い印象です。雪の影響を受けるクラブは多いです。試合だけを考えればスケジュールを組めるかもしれませんが、それだけでは解決しません。

 中断期間の練習をどうするか。スタジアムはもちろん、練習場を整備しないといけない。シーズン前、中断期間にキャンプを行うなら、雪国に限らず各クラブの金銭的な負担が増えます。また、寒いなかどれだけのお客さんが来てくれるか……。寒い時期の観戦はホントに辛いです。仮に休みの幅が広がれば、そのぶんどこかで過密日程になってきます。考えれば考えるほど、良い答えが出てこないです。

夏場の試合は減らすべき 開始時間ももう少し遅く

夏場の試合は減らすべき 開始時間ももう少し遅く

運営面では夏場はかき入れ時となる(名古屋×新潟@国立) photo/Getty Images

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 私は雪が降る地域に住んだことがないので、実際に暮らす大変さがわかりません。ただ、想像以上の難しさがあるのだろうなと思っていて、勢いで「秋春制にします」と言ってしまうのは大きな問題を残すと感じています。

 シーズンを移行することで各クラブに冬場も使える練習場が整備され、ヒーター付きの座席、屋根アリのスタジアムが各地にできる。こうなれば理想ですが、言うほど簡単ではないことはわかっています。いきなり“やれ”と言っても不可能で、お金も時間もかかることです。JFA、Jリーグが突き詰めて考え、今回の機会に秋春制へ移行することで少しでも理想に近づくなら、個人的にこのタイミングでとは思っています。

 移行を見送るにしても、猛暑のなかでの試合は減らさないといけないです。現状の春秋制でいくとしても、プレイ強度を維持するためには夏場のスケジュールを変える必要があります。いまの気象状況のなか、7月、8月に週2試合を行うのは厳し過ぎます。ルヴァン杯を一戦のみのトーナメントにするなど、シーズン全体で試合数の調整が必要です。

 夏場はキックオフ時間を遅らせるのも一考だと思います。19時でも暑いのが現実ですが、世界的に温暖化が進んでおりこの先もっと暑くなると予想されます。20時、21時のキックオフも検討しないといけないですが、今度は帰宅問題が出てきます。最初から鳴り物での応援はできないなどの問題も出てきます。

 秋春制にして9月開幕、5月閉幕にすれば猛暑でのプレイは避けられますが、現場にメリットはあるものの夏休み開催を失うことで運営的にはデメリットとなります。子どもの冬休み=Jリーグの冬季中断期間になるし、春休みは短く、その期間に開催される試合は1試合、2試合となります。夏休みほどの収益は見込めないでしょう。

 シーズン移行は日本サッカーにとって大きな問題で、すぐに答えが出るものではありません。時間をかけてさまざまな意見を取り入れながら、解決していかないといけないです。一番はやはり、お金の問題になってきます。JFA、Jリーグが各クラブに補償するお金もそうですし、サポーターも夏場と冬場では観戦に備える準備が違ってきます。ひょっとしたら、Jリーグ観戦のためだけに車のタイヤを交換しなければならないかもしれません。

 リスクを恐れずに、やってみないとはじまらない。そんなふうに、簡単には言えない問題だととらえています。

構成/飯塚 健司

電子マガジンtheWORLD(ザ・ワールド)285号、9月15日配信の記事より転載

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