[西岡明彦]果敢な采配で称賛のポステコグルー 選手の心をつかむその言葉とは

チェルシー戦には敗れたものの、果敢な采配が称賛を浴びた photo/Getty Images

プレミア最強ガイド #108

 今月6日(月)チェルシーに敗れ開幕からの無敗記録が10試合で止まったトッテナム。それでもマンチェスター・シティやアーセナルらとともに優勝争いに絡んでいる状況は、今季のプレミアリーグ最大のサプライズとなっています。月間最優秀監督賞を8月、9月と就任後2カ月連続で受賞するなど、早くもその指導力が評価されているアンジェ・ポステコグルー監督ですが、類まれな彼の手腕に関するエピソードを紹介します。

 今季、スパーズにとって最大の課題は絶対的エースとしてチームを支えてきたFWハリー・ケインの後継者選びでした。韓国代表FWソン・フンミンをサイドから中央にコンバートする策で十分な得点力を残していますが、それには過去の経験が影響したとのこと。「ソンは2015年のアジア杯で私のチーム(豪州代表)を相手にゴールを決めたんだ。彼がゴールスコアラーであることを知るのに十分だった。長い間彼を追いかけてきたが、攻撃的な選手に必要なのはゴールを脅かすことだが、彼はそれができる存在であり、フィニッシャーとしても優れている」とポステコグルー監督は今季8得点を挙げているソン・フンミンをセンターフォワードとして起用した理由について語っています。

 一方、巧みな話術で選手のモチベーションを向上させることが出来るのも、この指揮官の魅力です。今夏レスターから加入したMFジェイムズ・マディソンは、移籍交渉の席上で語られた指揮官の言葉に心を揺さぶられたそうです。

「彼のプレイスタイルの中で僕がどのようにフィットするかの話をした。そして最後に、『ジェイムズ、話ができて良かった。君がここへ来る決断をしても、しなくても、これまでとは全く異なるトッテナムを見ることになると思うよ』と言われた。そんな彼の自信に魅了された。スパーズに加入して彼のためにプレイしたいって思ったんだ」

 またソン・フンミンはポステコグルー監督が特別な存在であることを認めた上で、「特に試合直前の彼のチームトークの話し方は最高。胸が弾むような感じがするし、ピッチで彼のため、チームのために全力を尽くしたいという気持ちにさせられるのは大きな違い。ここまでは素晴らしい旅になっているね」と手応えを語っています。 

 かつてアーセナルを率いたアーセン・ヴェンゲル監督は「マディソンが繋ぎ役となり創造性を加えている。DFファン・デ・フェンの獲得も大きい。そして、ソンの動きがとても良い印象だ。今のところ優勝を争うのは、マンシティ、トッテナム、アーセナル、リヴァプールの4チームと言えるだろう」と、スパーズの躍進は今後も続くと予想しています。

 日本にも縁があった指揮官の活躍は嬉しいものですね。

文/西岡 明彦

電子マガジンtheWORLD(ザ・ワールド)287号、11月15日配信の記事より転載

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