昨季、終盤になってアーセナルが失速した原因はなんだったか。
第36節、ホームのブライトン戦に0-3と敗れたアーセナル。1試合消化の少ないマンチェスター・シティとの勝点差が4となったとき、アーセナルの19季ぶりの優勝は絶望的となった。
この試合のあと、英『Daily Mail』では次のように報じられた。
「背中の負傷でリーグ戦直近9試合を欠場したウィリアム・サリバの大きな不在を指摘することができる。同じく、右サイドバックの冨安(健洋)も膝を手術し、同様の期間を欠場した」
「たとえ彼らがいたとしても、ある試合では簡単に失点し、彼らのエキサイティングなアタッカーたちは常にそれを補えるとは限らなかった。サリバと冨安の不在により、選手層と回復力の欠如が露呈された」
選手層と回復力の欠如。それがマンチェスター・シティとの埋められない差となった。センターバックでも起用できるベン・ホワイトを冨安の離脱によって右SBに固定せざるを得なくなり、サリバの代わりにいささか能力の劣るロブ・ホールディングをレギュラー起用するしか手立てがなくなった。サリバと冨安がヨーロッパリーグのスポルティングCP戦で同時に長期離脱したのはアーセナルにとって悪夢であったが、それを防ぐことは果たしてできなかったのだろうか。
指揮官ミケル・アルテタはメンバーを固定することが多い。昨季前半は、それが功を奏した。ブカヨ・サカ、マルティン・ウーデゴー、ガブリエウ・マルティネッリといった中心メンバーがあうんの呼吸で大暴れ。破竹の勢いで勝点を積み重ねていた。
しかしリーグ終盤になると、彼らの動きにははっきりと疲労が見えるようになっていった。加えて、前述のサリバや冨安の負傷離脱に見舞われ、チームは勢いを失った。クラブOBのトニー・アダムス氏は「おそらく、昨季は早めに、かつ十分に選手をローテーションしなかったと思う。ブカヨ・サカなどは力を失いかけていた」と指摘している。アルテタがもう少し選手をローテーションしていれば、失速はある程度防げたはずだった。
これが今季改善されているかといえば疑問が残る。先発メンバーは相変わらず固定されがちで、リーグ戦でもCLでもサカやマルティネッリがスタメンから外れることはほとんどない。一方でウイングのサブとなるリース・ネルソンなどはリーグ戦わずか62分の出場にとどまっており、先発は一度もない。
リーグ前半戦で好調を見せていたストライカーのエディ・エンケティアも現在はガブリエウ・ジェズスに代わっての出場ばかりとなり、出場機会の減少にともなってパフォーマンスを落としているように見受けられる。正守護神を降ろされてしまったアーロン・ラムズデールも然り。ベンチメンバーが試合勘を失っているように見えるのは気になるところで、これは全体的なチーム力の低下も招いてしまう。アルテタはもう少しベンチのメンバーを信用するべきだ。