昔は個人主体だったが現在は戦術面で重要に
名良橋氏がもっとも注目するテオは、思い切りの良さ、迷いのなさが魅力 photo/Getty Images
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サッカーにはいろいろなポジションがあります。現役時代の私はサイドバックでしたが、昔といまでは役割が桁違いに変化しています。現代サッカーにおけるサイドバックは攻撃においてもっとも重要なポジションとなっています。
当時はチーム全体のシステムや戦術のなかでサイドバックがいかに優位に立つかより、個人主体のサッカーで局面での攻防が多かったです。可変式システムとかもなかったですね。そうしたなかいろいろなタイプのサイドバックがいましたが、私に関してはスピード、走力、パワーがあり、攻撃的だったというイメージをみなさん少なからず持っていると思います。
年月を経るごとにサッカーは中央を崩すことが難しくなり、サイドで優位に立ちたいという方向へ進み、サイドバックの役割は縦に駆け上がってクロスを入れるだけではなくなっていきました。攻撃の組み立てに参加する。ゲームを作る。そのためにうまく中間ポジションでボールを受ける。ハイブリッドが求められると言えばいいでしょうか……。戦術が深掘りされるなかさまざまな役割が追加され、現在ではいろいろなことが求められる攻撃において重要なポジションとなっています。
ただ、サイドバックなのでベースはあくまでも守備にあります。ここに関しては、絶対に疎かにしてはいけないです。一番後方のポジションなので、1対1に負けない。中央に絞ってカバーする。守備のベースがあったうえで、それぞれのキャラクターを出していく。守備を念頭に置きながら、攻撃に絡むことが大事です。
サッカーを観戦するときに、みなさんどんなところに注目しているでしょうか? 視点や感想は十人十色で、同じ一試合でも受ける印象は人によって違います。私はやはりサイドバックに目がいきます。球技専用スタジアムであればサポーターから近いですし、ボールを触る回数も多いです。また、サイドバックが良いプレイをしたチームは、実際に良い結果を出しているとも思います。
チームのスタイルによってサイドバックのキャラクターは変わってきます。オーソドックスなタイプがいれば、現代型のプレイを見せる選手もいます。個人的な視点になりますが、私がいま注目する4人のサイドバックを紹介させてください。左右関係なく、海外から1人、J1から2人、J2から1人となっています。
テオのプレイには迷いがない 新保は山口のストロングに
福田(左)は京都の主力として全試合先発中だ photo/Getty Images
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最初に名前をあげたいのは、テオ・エルナンデス(ミラン)です。セリエAは日本国内での注目度が低いですが、私はテオがいるのでチェックしています。ダイナミック過ぎる左サイドバックで、自陣のゴール前からボールを運んで得点した試合もありました。
前方でプレイするラファエル・レオンとの連携もよく、中央に入るなどスペースを使い分けながら前進していきます。天性のスピード、パワーがあって、思い切りの良さがあります。一切の迷いがなく、前へ前へとチャレンジするプレイが多いのがいいです。
私が現役時代に似たようなタイプだったので、どうしても目に留まります。スピード、パワーがぜんぜん違いますが、あの思い切りの良さには惹かれます。 福田心之助(京都)は背番号2をつけた右サイドバックで、まずこれだけで私は目がいきます(※編集部注。名良橋氏の現役時代の背番号は2)。戦えるサイドバックで、攻守両面で頑張れる。仕掛けるスピード、走力もあって物怖じしないところもいいです。まだ23歳と若く、さらなる成長に期待しています。
石原広教(浦和)はオーソドックスなサイドバックで、覚悟を持って湘南から浦和に移籍し、序盤は苦しむも酒井宏樹のケガによって先発出場のチャンスを掴みました。上下動ができてスピードがあり、身長169センチで上背はないですがバネもあります。守備における対人プレイにも強いです。4バックの両サイドでプレイできて、湘南では3バックの中央を務めたこともありました。もっと飛躍してほしい選手です。
現代型サイドバックとして紹介したいのが、J2でプレイする新保海鈴(山口)です。左利きの左サイドバックで、うまさがあってキックが正確。前方にボールを運べて、ゲームを組み立てることができます。可変式システムで戦う山口にあって、左サイドで優勢を取れる選手で、チームのストロングになっています。
これからのサイドバックを考えると、戦術の進化によって“強度”がより求められるようになっていくでしょう。体格も大型化していくかもしれませんが、私は上背がなくてもできると思っています。願望として、他ポジションからコンバートされたのではなく、根っからのサイドバック、生粋のサイドバックにもっと出てきてほしいですね。
いろいろな能力を持ったうえで、なにかひとつ武器があると興味を惹かれます。「ここは絶対に負けません」という特長があると、観戦していてオッとなります。私の現役時代と違って、いまは賢くないとサイドバックはできません。みなさんにももっと注目してほしいです!
構成/飯塚 健司
※電子マガジンtheWORLD(ザ・ワールド)第292号、4月15日配信の記事より転載