今季のプレミアリーグも残りわずかとなった。惜しくもタイトル争いから後退したリヴァプールは指揮官ユルゲン・クロップの今季限りでの退任を発表しており、ひとつの時代が幕を閉じることになる。
英『Daily Mail』は、クロップが就任した2015-16シーズンからの純支出とタイトル数をプレミアのライバルクラブ、いわゆる「BIG6」と比較している。結果、リヴァプールはライバルたちよりもはるかに安定したビジネスを行えていたことが浮き彫りになっている。
リヴァプールが8年間で支出したのは3億4600万ポンドほどだ。補強の多くが価格以上の成果を挙げていることが大きく、モハメド・サラー4300万ポンド、サディオ・マネ3600万ポンド、アリソン・ベッカー5500万ポンドなどは、その後の彼らの活躍をみればバーゲン価格と言って差し支えない。選手の売却もうまく、ライアン・ブリュースターを2350万ポンドでシェフィールド・ユナイテッドへ、クリスティアン・ベンテケを2,750万ポンドでクリスタル・パレスへ売却するなど、余剰戦力を上手にお金に換えてきた。今季初めにもファビーニョ、ジョーダン・ヘンダーソンのベテランMFをサウジへ売却し5200万ポンドほどを得ている。
また、クロップはアカデミーから優秀な選手を引き上げることにも長けていたため、純支出が抑えられている。それでも8年間でチームが大きく崩れたことはなく、18-19のCL、19-20のプレミアリーグほか、コミュニティ・シールドやUEFAスーパーカップも含めると8つのタイトルを獲得している。
ここ数年で最大のライバルとなったマンチェスター・シティは、純支出6億3000万ポンドほどで、獲得したトロフィーの数は17にものぼる。支出がリヴァプールよりもかなり多いが、それでもタイトル獲得数を見るとこれも驚くべきものだ。イルカイ・ギュンドアン2000万ポンド、ベルナルド・シウバ4300万ポンド、そしてアーリング・ハーランド5000万ポンドなど、こちらも成功した取引が目立つ。
アーセナルは長く低迷期を過ごしたが、ここ数年の気前のよい財布の開けっぷりがようやく実を結んだところだろうか。期待外れに終わったニコラ・ぺぺにつぎこんだ7200万ポンド、あるいはセルジュ・ニャブリのわずか500万ポンドでの放出や、アーロン・ラムジーをフリーで放出してしまうなど失策も目立ったが、近年はアレックス・イウォビを3400万ポンドで、フォラリン・バログンを3500万ポンドで放出するなど賢い取引もあり、純支出は7億200万ポンドほど。1億500万ポンドでデクラン・ライスを買った割には少ない支出と見ることもできる。昨季からのチーム力の向上を見れば、投資は成功だったと言ってよいか。獲得タイトルは6つだ。
その他、トッテナムの純支出は5億7000万ポンド、チェルシーとマンチェスター・ユナイテッドはともに10億ポンド以上に至っているという。トッテナムが未だに獲得タイトル0なのも痛ましいが、もっとも波が大きいのはチェルシーとユナイテッドだろう。チェルシーは6つのタイトルのうち16-17のプレミア優勝、20-21のCLなどビッグタイトルを獲れている。しかし最大1億3000万ポンドとも言われたエデン・アザールの売却益などがあったにも関わらず支出はかさんでおり、近年のトッド・ベーリー体制での「爆買い」も支出に悪影響を与えている。
ユナイテッドはFAカップ、ヨーロッパリーグを含む5つのタイトルを獲得しているが、ポール・ポグバの8900万ポンド、ハリー・マグワイアの8000万ポンド、アントニーの8500万ポンドなど失敗とみなされる補強が続いており、近年の低迷の原因にもなってしまっている。カゼミロに使った7000万ポンドも新オーナーから疑問視されているとみられ、未だ欧州トップの資産価値を持つクラブでありながらビジネス的にも失敗が続いている。
こうしてみると、クロップ期のリヴァプールがいかに上手いビジネスを行っていたかがわかってくる。退任後もこの健全経営ぶりを続けることができるか、新体制のクラブ運営にも注目が集まることになるだろう。