[名良橋晃]混戦模様の“戦国”J2 上位&下位の現状をJ2マイスターが解説

清水は突っ走れるか いわきは戦術が多彩

清水は突っ走れるか いわきは戦術が多彩

首位を突っ走る清水は、どのチームよりも戦力が充実している photo/Getty Images

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 今季のJ2はこれまでより少ない20チームで争われていて、すでに日程の三分の一を消化しています。“戦国J2”であり、まだまだどうなるかわかりません。このまま清水が突っ走って昨季の町田のように昇格を決めるのか、どこかで勢いが止まるのか。

 いまの清水に関しては、戦力が充実しています。守備陣は3バック、4バックを使い分ける選手層があり、攻撃をみても乾貴士がいなくても十分に戦えています。北川航也が点を取れているし、ドウグラス・タンキも出てきました。好守ともにスキがありません。

 選手、サポーターともに、昨季の悔しさを心にとどめていると思います。15節を終えて2位に勝点7差をつけていますが、勝負はこれからだと十分に理解していると考えられます。難しいのは一巡してからです。後半戦に向けて、各チームに動きが出てきます。清水がこのままイケるのか、注目しています。
 大混戦の上位陣では、いわきに頑張ってほしいですね。田村雄三監督によって手堅い守備+多彩な戦術を持つチームとなっています。ボールを握って戦いたいチームに対して強度の高い守備で対抗し、ゴールへダイレクトに向かう。クラブとしてのスタイルが確立されていて、J3→J2とカテゴリーを上げるなか質を高めています。

 田村雄三監督は選手の良さを引き出せる指導者で、若い選手が成長できるチームでもあります。ともにC大阪から育成型期限付き移籍で加わった大迫塁、西川潤は、「成長したい」という強い覚悟を持ってプレイしていると思います。チームとしてどれだけ上位にいけるかはもちろん、こうした選手のたちのパフォーマンスも楽しみにしています。

 長崎はシーズン前に監督問題でゴタゴタがありましたが、下平隆宏監督のもと3節から負けなしとなっています。アンカーの秋野央樹は代えがきかない攻守の要で、チームを引っ張っています。左サイドの笠柳翼もいいですね。同ポジションには松澤海斗もいて、競争することで両選手の良さが出ています。

 また、なんといっても長崎は外国籍選手の力が大きいです。フアンマ・デルガドは昨季の得点王で、エジガル・ジュニオは今季得点ランクの首位タイとなっています。マテウス・ジェズスも決定力が高く、点を取れる選手が揃っています。

 長崎がJ1自動昇格圏内(2位)でシーズンを終えるためには、いまの勢いを持続しなければなりません。いえ、維持しているだけだと、ホントになにが起こるかわかりません。そこにJ2を勝ち抜く難しさがあります。

秋田が勝てるチームに進化 北関東3チームは苦戦中

秋田が勝てるチームに進化 北関東3チームは苦戦中

“謙さんイズム”が浸透する秋田は、勝てるチームになっている photo/Getty Images

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 私は秋田の吉田謙監督が大好きで、“謙さんイズム”でどこまで順位をあげられるか毎年注目しています。勝負にこだわった戦いを徹底できるチームで、選手が入れ替わってもベースは変わりません。力強さがあり、しっかりと戦えます。

 もともと負けにくいチームで、どの試合を見ても最後まで勝負を諦めない気持ちが伝わってきます。11節千葉戦は1点をリードされ、さらには退場者を出して数的不利になりました。そこから終了間際に大・大・大逆転して勝点3を得ています。確実にアップデートされ、今季の秋田は勝てるチームになっています。

 残留争いに目を向けると、北関東の3チーム、群馬、栃木、水戸が苦しんでいます。このうち、群馬、水戸は監督交代を決断しています。今後に行われる“北関東ダービー”は、これまで以上に白熱したものになるでしょう。群馬、栃木、水戸がいかに這い上がるか。このまま終わることはないと信じています。

 群馬は昨季を一桁順位で終えており、マークされていました。相手の対策を上回る上積みが必要でしたが、難しさがあったと思います。ヘッドコーチから昇格した武藤覚監督のもとどう勝点を奪っていくかですが、15節を終えて勝点6で17位栃木からも少し離されている苦しい状況です。しかし、まだまだ試合数は多く、チャンスは必ずあります。

 栃木は田中誠監督が当初はアンカーを配置して戦っていましたが、いまはボランチを2枚にしています。守り抜いて勝つのが現状で、連勝がありません。上にいくためには、まずは変わらずに耐えることが今後も必要でしょう。

 水戸は14節熊本戦、15節山形戦に勝利し、ジワリと順位を上げました。森直樹新監督のもと、前からのプレスをしっかり出せていました。水戸の良さは前方向に圧力をかけることにあり、これをすることで「勝点6」を得ています。

 どのチームにも言えることですが、シーズンはまだ三分の一が終わったばかりです。試合数は残っており、夏の移籍期間に間違いなくいろいろな動きがあります。

 J1へ個人昇格する選手も出てくるでしょう。これは絶対に避けられない宿命で、抜けたら抜けたで、チームとしていかに戦力を維持するかが大事です。各チーム、いかに補強するかが後半戦のカギを握るポイントになると思っています。

構成/飯塚 健司

※電子マガジンtheWORLD(ザ・ワールド)第293号、5月15日配信の記事より転載

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