ドイツサッカー界を揺るがした衝撃の移籍をゲッツェが振り返る 「練習中に60人ものファンがやってきて僕を侮辱した」

フランクフルトで活躍するゲッツェ photo/Getty Images

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神童の波乱万丈のキャリア

マリオ・ゲッツェのキャリアは、ボルシア・ドルトムントの超新星としてサッカーシーンに登場して以来、浮き沈みの繰り返しだった。現在32歳という成熟した年齢と、アイントラハト・フランクフルトでリーグ戦30試合出場と充実のシーズンを経て得た自信を胸に、ゲッツェは現地紙『Die Zeit』に自身のキャリアの中で最も困難だった瞬間について語っている。

マリオ・ゲッツェがドルトムントを去り、最大のライバルであるバイエルン・ミュンヘンに移籍するという衝撃的なニュースが流れたのは、2012-13シーズンのことだった。運命のように、両チームはウェンブリー・スタジアムで行われたチャンピオンズリーグ決勝で対戦し、アリエン・ロッベンの決勝ゴールによってバイエルンに軍配が上がった。リーグ戦でも、ドルトムントが2010-11シーズンから二連覇を果たしていた中で、バイエルンが優勝し三冠を達成。そしてドルトムント側としては翌シーズンに向けてリベンジに燃える中で、2011年にゴールデンボーイ賞を受賞した若きスターであるゲッツェがバイエルンに移籍したことはドルトムントファンの逆鱗に触れることとなった。

ゲッツェは、1年後にフリーエージェントとしてバイエルンに加入したロベルト・レヴァンドフスキとは異なり、契約解除金3700万ユーロをクラブに残している。それでもドルトムントファンはその移籍を裏切り行為とみなし、ゲッツェにそれを知らしめた。
「ある日の練習中に60人ものファンがやってきて、僕を侮辱したことは忘れられない。僕は20歳で、合理的な理由(個人の判断ではなくクラブ間取引の結果での移籍)からバイエルンに移籍することを決めたんだ」

その後、2014年のワールドカップでドイツ代表として出場したゲッツェは、決勝戦でゴールを決め一躍国民的ヒーローとなった。しかし、キャリアのピークは長くは続かず、度重なる怪我や、代謝に問題が発生し体力が激減するといったアクシデントが続いた。そして健康に関する問題は2016年にドルトムントへ帰還した後もゲッツェを苦しめることとなる。

「自分の体に多くのことを要求しすぎたことの表れだった。落ち着いて呼吸する時間を与えず、ロボットのように自身のプレイに要求し続けた結果、体の機能に問題が生じたんだ」

「(2020年に)ドルトムントでの契約が満了したばかりの頃、COVID-19が蔓延し、生まれて初めて3カ月間クラブに所属しなかった。その後、息子が早産で生まれ、3週間集中治療室にいた。それからは、家族が健康であること以上に大切なことはないという、まったく新しい視点を持つようになったんだ」

ドイツの神童は数多くの試練を乗り越えてフランクフルトへ移籍し、かつての輝きを取り戻そうとしている。ベテランの年齢に差し掛かったゲッツェがどのようなサッカー選手としての晩節を迎えるのか注目していきたい。

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