グループB・第3戦
クロアチア 1-1 イタリア
勝ち点1で最下位のクロアチアと勝ち点3で2位につけるイタリアが対戦した。
どちらもノックアウトステージ進出の可能性を残しており、両者の命運をかけた戦いとなった。勝利が欲しいクロアチアは、マリオ・パシャリッチとルカ・スチッチが今大会初めて先発出場。引き分け以上で突破が決まるイタリアは、ここまでグループリーグの2戦で先発したジャンルカ・スカマッカとフェデリコ・キエーザの前線ペアをマテオ・レテギとジャコモ・ラスパドーリに変更した。
試合はクロアチアボールでキックオフ。開始4分、クロアチアのスチッチが、先発起用の期待に応えるように積極的なミドルシュートを放つ。ドライブのかかった球筋が枠を捉えるも、イタリアの守護神ジャンルイジ・ドンナルンマが横っ飛びで防ぐ。10分頃まで守備の時間が多かったイタリアは、攻撃時になると両サイドバックのどちらかが高い位置を取り、数的優位を作る戦術を見せる。6分、13分と立て続けにジョヴァンニ・ディ・ロレンツオが右サイドを駆け上がりチャンスを作る。が、どちらもクロスの精度を欠き得点には至らない。
互いにチャンスを作るものの、クロアチアの運動量と技術がわずかに優りボールを保持する時間が続く。しかし攻め手が見つけられず、組み立てに苦労する。かたやイタリアもボールを奪って攻めに転じる場面を幾度か作るが、大胆さやパスの精細を欠き、いまいち攻撃が噛み合わない。
すると26分、イタリアが久しぶりのチャンスを迎える。コーナーキックがクリアされるも、そのセカンドボールを拾い、ニコロ・バレッラが素早くクロスを上げる。これがフリーのアレッサンドロ・バストーニの頭にドンピシャで合うが、クロアチアのGKドミニク・リバコビッチの好セーブに阻まれてしまう。
その後は、クロアチアもイタリアも互いにボールを保持し攻撃を展開するも、決定的な場面を作れず、前半は0-0で折り返す。
後半からクロアチアはFWのアンテ・ブディミルを投入し、イタリアはロレンツォ・ペッレグリーニを諦めて、ダビデ・フッテラージをピッチに入れる。両チームとも精細を欠いていた攻撃に、安定感を与えたいところだ。
すると早々に試合が動く。50分過ぎ、クロアチアはペナルティエリアの左側でルーズボールを拾ったクラマリッチが切り込み、強引にシュート。それが幸運にもフラッテージの手に当たり、PK判定となる。キッカーはモドリッチ。この重大な局面を頼れるキャプテンに託したが、なんと守護神のドンナルンマが読み切り、見事にこれをセーブする。
しかしクロアチアはこのPKで勇気を得て、勝利への執念を見せる。ここぞとばかりに攻勢を強め、55分に再びチャンスを作る。右サイドの高い位置からスチッチがクロスを放り込むと、そこに走り込んだブディミルが足で合わせる。ドンナルンマも素早い反応でなんとか弾くが、そのこぼれ球に反応したのがモドリッチだった。体制を崩しながらも左足を振り抜き、待望の先制点を奪う。これが今大会、クロアチアに取って初めての先制点となった。
劣勢に立たされたイタリアは、この直後にキエーザを投入する。そして、その彼を中心に攻撃を展開するものの、なかなか状況を変えられない。ただ60分にはバストーニが再びフリーでヘディングシュートを放つも枠を捉えきれず、71分にはゴール正面のいい位置でFKを獲得するも、 ラスパドーリのキックがクロアチアの高い壁に阻まれる。
一方、クロアチアは70分にコバチッチとスチッチの中盤を替え、イバン・ペリシッチとルカ・イバンシッツを投入。そしてリードしつつも守備に奔走していたこのチームが久しぶりのチャンスを作る。79分、モドリッチが右サイドで受けると、ディフェンスのタイミングをずらし意表を突くスルーパスをタッチライン際に送る。そこに走り込んだブロゾビッチが、ドリブルで運びシンプルにクロスを選択。ゴール前にブディミルが勢いよく走り込むも、イタリアDFに紙一重でクリアされてしまう。
80分、クロアチアのズラトコ・ダリッチ監督はここでモドリッチを下げる決断をする。ここまでチームを引っ張ってきた功労者がピッチを外れると、会場が大きな拍手に包まれる一幕があった。
代わりに入ったロブロ・マイェルを含め、これで中盤の新陳代謝を図ったクロアチアは、守備を固めつつも追加点を狙える体制を築く。対するイタリアは失点以降、試合を支配し続けてはいるものの、相手の固い守備と自らの焦りからか、攻撃が噛み合わない状態が終盤まで続いていた。そこで81分、ルチアーノ・スパレッティ監督は左サイドの高い位置を取っていたDFのマッテオ・ダルミアンに替えてマッティア・ザッカーニ、それからジョルジーニョに替えてニコロ・ファジョーリを投入し、最後の望みをかける。
ただクロアチアも1点のリードを守るために俄然、球際の圧力を強める。イエローカードをもらいながらもイタリアを苦しめ続け、遂に時計の針が90分を指す。ファールで試合が止まることが多くなったためか、アディショナルタイムは8分。イタリアはキエーザのいる右サイドからの崩しや、コーナーキックなどで再三、相手陣内に攻め入るが、守備を固めたペナルティエリア内にはスペースがなく、ゴールが依然として遠い状況。イタリアベンチ内にも敗戦の雰囲気が漂う。他方、クロアチアベンチでは、モドリッチが立ち上がってこの戦況を見つめる。
そしてタイムアップが差し迫ったアディショナルタイム8分。まさかのドラマが待っていた。DFのリッカルド・カラフィオーリがフラッテージとのワンツーで果敢に中央突破すると、クロアチアの陣形が崩れ、左サイドのザッカーニがフリーになった。その千載一遇の好機に、カラフィオーリは柔らかいパスを送る。走り込んだザッカーニがそれをダイレクトでシュート。見事にコントロールされたボールは弧を描きながらゴール右上に吸い込まれ、土壇場で同点ゴールが決まった。得点の予感が全くなかったイタリアが、たったワンプレイでチームの立場を逆転させることに成功した。
結局、これがラストプレイとなって試合は1-1で終了。アシストをしたカラフィオーリはピッチに仰向けに倒れ、嬉し涙を見せ、ドンナルンマも目の前の奇跡に呆然と膝をつくほど誰もが予想しなかった結末となった。これでイタリアは2位でのグループリーグ突破が決まり、クロアチアはあと一歩のところで勝利を逃し、敗退が濃厚になった。
[スコア]
クロアチア 1−1 イタリア
[得点者]
クロアチア
55分 ルカ・モドリッチ
イタリア
98分 マッティア・ザッカーニ
[ラインナップ]
クロアチア
監督:ズラトコ・ダリッチ
GK
ドミニク・リバコビッチ(フェネルバフチェ)
DF
ヨシプ・スタニシッチ(レバークーゼン)
マリン・ポングラチッチ(レッチェ)
ヨシュコ・グバルディオル(マンチェスター・シティ)
ヨシプ・シュタロ(アヤックス)
MF
マテオ・コバチッチ(マンチェスター・シティ)
ルカ・モドリッチ(レアル・マドリード)
マルセロ・ブロゾビッチ(アル・ナスル)
FW
マリオ・バサリッチ(アタランタ)
ルカ・スチッチ(ザルツブルク)
アンドレイ・クラマリッチ(ホッフェンハイム)
交代出場・退場
45分 パサリッチ→アンテ・ブディミル(オサスナ)
70分 マテオ・コバチッチ→ルカ・イバンシッツ(フェイエノールト)
70分 スチッチ→イバン・ペリシッチ(ハイドゥク・スプリト)
80分 モドリッチ→ロブロ・マイェル(ヴォルフスブルク)
90分 クラマリッチ→ヨシプ・ユラノビッチ(ウニオン・ベルリン)
イタリア
監督:ルチアーノ・スパレッティ
GK
ジャンルイジ・ドンナルンマ(パリ・サンジェルマン)
DF
ジョヴァンニ・ディ・ロレンツォ(ナポリ)
リッカルド・カラフィオーリ(ボローニャ)
マッテオ・ダルミアン(インテル)
アレッサンドロ・バストーニ(インテル)
MF
フェデリコ・ディ・マルコ(インテル)
ジョルジーニョ(アーセナル)
ロレンツォ・ペッレグリーニ(ASローマ)
ニコロ・バレッラ(インテル)
ジャコモ・ラスパドーリ(ナポリ)
FW
マテオ・レテギ(ジェノア)
交代出場・退場
45分 ペッレグリーニ→ダビデ・フラッテージ(インテル)
57分 ディ・マルコ→フェデリコ・キエーザ(ユヴェントス)
75分 ラスパドーリ→ジャンルカ・スカマッカ(アタランタ)
81分 ダルミアン→マッティア・ザッカーニ(ラツィオ)
81分 ジョルジーニョ→ニコロ・ファジョーリ(ユヴェントス)