ラウンド16でスロバキアを相手に2-1で勝利し、ベスト8進出を決めたイングランド代表。
後半ATのジュード・ベリンガムのオーバーヘッドをきっかけに勢いに乗ったイングランドが延長開始早々のハリー・ケインの逆転ゴールでなんとか勝利したこの試合。ベリンガムのゴールが生まれるまでいいパフォーマンスを見せていたのはスロバキアだった。速攻と遅攻をうまく使い分け、さらに連動したプレスでイングランドのビルドアップを苦しめた。
最終的にはオフサイドで取り消しとなった51分のフィル・フォーデンの幻のゴール以外、いい形が作れなかったイングランドの攻撃陣。デクラン・ライスとコビー・メイヌーの中盤コンビは奮闘したが、例の如く中央のレーンからばかりのイングランドの攻撃は怖さを欠いた。
そんななか、英『Daily Mail』が注目したのは90分+4分から出場したイヴァン・トニーだ。同メディアは「おそらくトニーはスロバキアの守備陣にとってケインよりも厄介な存在だった」と綴り、ケインとのタッチ数を比較している。
0-1の状況で投入されたトニーはケインと2トップのような形で配置された。決勝点となったケインのゴールをアシストしたのがトニーだったが、同選手は30分ほどの出場で22タッチを記録したという。これは105分間出場したケイン(28タッチ)が記録したタッチ数と6回しか変わらないようだ。ケインのタッチ数からもわかるようにこの試合でも消えている時間が長く、耐えきれず下がってきてボールを受けるシーンも見られた。もちろんそれが悪いことではないが、ケインがいたスペースに走り込む選手もいないため、前線に人がいないという状況が生まれてしまうことが多々ある。
延長後半にはトニーがワントップで最前線に配置されたが、ロングボールをことごとく収めた。収められなくてもファールをもらったりと、短い時間でも十分に存在感を示したと言える。後方から繋ぐことができない今のイングランドは度々ロングボールを蹴るが、これを収めることができる選手がいなかった。ケインにもできないことはないが、ロングボールを収めてからのポストプレイであればトニーの方が適役だ。
トニーをスタメンで起用する可能性は低いだろうが、攻撃が停滞している時の切り札の1人としてトニーはイングランドの新たな武器になるだろう。スター選手揃いのチームを采配するかサウスゲイトの手腕が試されるところではあるが、トニーがこの試合で残した存在感は今後の起用にも繋がるアピールになったと言える。