EUROで白熱する延長戦の裏で選手の健康は限界に達している? 『BBC』のサッカー解説陣からも懸念の声

PK戦まで戦い抜いたフランス photo/Getty Images

サッカー界が直面する大きな問題

EURO2024もベスト4をかけた戦いが始まり、実力が伯仲する熱戦が繰り広げられている。7月6日に行われたスペイン対ドイツ、ポルトガル対フランスの両試合で延長戦まで突入し、ポルトガル対フランスはPK戦での決着となった。その中で、『BBC』で解説者を務めている元イングランド代表のガリー・リネカー氏とリオ・ファーディナンド氏は選手達の健康が限界に達する可能性があると警鐘を鳴らし、プロのスター選手たちが毎シーズン行っている試合数の多さと、サッカー大会から延長戦を廃止することについて議論した。『Daily Mail』が伝えている。

『BBC』の番組で司会を務めたリネカー氏はポルトガル対フランス戦の分析をする中で、延長戦を戦う中での選手の疲労について「そろそろ延長戦を廃止して(前後半終了後すぐに)PK戦に移行する時期ではないか」と「現代の選手たちがシーズン中により多くの試合に出場することを求められている」という議論を投げかけた。

「シーズンを通して試合数が増えていることが、今大会で疲れた表情の選手を見ることになった理由のひとつだと思う」

「リオ(・ファーディナンド)、サッカーの試合数を増やすというのなら、延長戦をなくしたりといった(選手たちに)何かお返しをする必要があると思うんだ。だって、どうせ延長戦になったら、家で試合を見ている誰もがPK戦を見たがっているんだから!」

番組の議論に参加していたファーディナンド氏もリネカー氏の主張に同調し、「選手たちの体が限界を迎えてしまうだろう」と語った。

「選手たちが疲労で壊れてしまうような大会や試合が増えれば、選手たちにとって不公平だと私も思う。時間を短縮する方法を見つけ、あなたの言うように、延長戦ではなく直接PK戦に突入するといった選択肢がこれから必要になるだろうね」

これまでにも一部の監督はすでに過密な試合スケジュールに厳しい反対を表明しており、ユルゲン・クロップやペップ・グアルディオラなども苦言を呈してきた。加えて、FIFAが2025年に32チームが参加するクラブワールドカップの開催を決定したことに対して、選手組合と各国のリーグから非難を浴びたことでさらにこの問題は浮き彫りとなっている。選手組合と各国のリーグは共同でFIFA会長ジャンニ・インファンティーノ氏に書簡を書いて、大会の創設に「シーズンの試合数が飽和状態を超えている。選手の健康が限界を超えて追い込むことになる」と反対の立場を表明した。

今回のEURO2024では、延長戦の戦いでラウンド16ではイングランドが勝ち越しゴールを決め、ラウンド8ではスペインも119分に勝ち越しゴールを挙げており、白熱した戦いのドラマは延長戦にも起こりうることは事実だ。また、多くの問題を抱えるクラブワールドカップだが、各国のビッグクラブ同士の対戦が増えること自体は歓迎するファンも多いだろう。それでも疲労で選手が怪我をしてしまっては本末転倒な話だ。各クラブが健康なベストメンバーで臨める試合が1試合でも増えることが、ファンからも選手からも最も期待されているところと言えるだろう。

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