[特集/CL&EL新時代 01]強豪クラブが勝ち残りやすい CL&EL新フォーマットの狙いとは

 チャンピオンズ・カップ、UEFAカップ、カップ・ウィナーズ・カップ。約30年前はこのような呼称で欧州3大カップが開催されていた。チャンピオンズ・カップに出場できるのは各国リーグ戦の勝者だけ。UEFAカップにはリーグ戦上位チームが出場し、カップ・ウィナーズ・カップには各国のカップ戦王者が出場していた。

 その後、欧州3大カップはさまざまな変化を遂げてきた。そして、今シーズンもまた大きくレギュレーションが変更されている。チャンピオンズリーグ(CL)、ヨーロッパリーグ(EL)、カンファレンスリーグ(ECL)。このうち、より注目度の高いCL、ELにスポットを当て、レギュレーションがどう変わり、それによってどう魅力を増したのか。新時代に突入した2つの欧州カップ戦を整理する。

各チームが8試合を戦うリーグフェーズを解説

各チームが8試合を戦うリーグフェーズを解説

前年優勝はレアル・マドリード。新フォーマットとなった今季はどのチームがビッグイヤーを手にするのか Photo/Getty Images

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 すでにスタートしているCLのリーグフェーズには36チームが出場している。ストレートインのシード権を持つ29チーム+プレイオフを勝ち上がった7チームという編成で、昨年までの32から出場チームが36に増えている。

 欧州サッカー連盟(UFFA)にはカントリーランキング、クラブランキングがあり、各国からCLに出場するチーム数やストレートインのシード権はカントリーランキングが参考にされている。こうしたなか、従来ともっとも大きく変化したのはグループステージが廃止されたことで、クラブランキングを基にしたリーグフェーズが導入されている。形式がわかりづらいという声も多く挙がっているようなので、ひとまずリーグフェーズから整理する。

 リーグフェーズは、総当たりではないがすべてのチームが一定数の試合を行う、いわゆる“スイス式トーナメント”の形式で開催される。出場する36チームがクラブランキングで上位から並べられ、9チームずつ4つのポットに振り分けられている。ランキング上位の8チームと前年度優勝チーム(計9チーム)がポット1、下位の9チームがポット4という具合だ。すなわち、それぞれのポットには実力が接近した9チームが入っている。
 そして、各チームがそれぞれのポットから抽選で決定した2チームと対戦し、合計8試合で順位が争われる(各チームとホームかアウェイのどちらかで1試合)。昨年までのグループステージは6試合だったので、単純に各チームが2試合多くCLを戦うことになる。日程的には厳しくなるが、CLの試合数増加は集客増加=収入増加にもつながるので、出場する各チームに金銭的なメリットがあるレギュレーション変更だといえる。

対戦カードは抽選によって決められ、たとえばクラブランキング1位でポット1のマンチェスター・シティは以下の8チームと戦う。パリ・サンジェルマン(ポット1)、インテル(ポット1)、ユヴェントス(ポット2)、クラブ・ブルージュ(ポット2)、スポルティングCP(ポット3)、フェイエノールト(ポット3)、スロヴァン・ブラチスラヴァ(ポット4)、スパルタ・プラハ(ポット4)。

 リーグフェーズの抽選にはいくつか条件が付けられていて、同国同士の対戦はなし。さらに、同国から出場するチームとの対戦は2試合までとなっている。イタリアからは5チームが出場していてマンCはインテル、ユヴェントスの2チームと対戦するが、イタリア勢との対戦はこれが上限というわけだ。他にもリヴァプールやセルティックがドイツ勢と2試合を戦うなど、こうしたケースが多くなっている。

 つまりイタリアに住むマンCのサポーター、ドイツで暮らすリヴァプールやセルティックのサポーターにとっては、短期間に国内で推しチームの戦いを2度観戦できるわけで、ここにもレギュレーション変更のメリットがある。

まずは24位以内に入ればいい 強豪はもれなく勝ち上がるか

まずは24位以内に入ればいい 強豪はもれなく勝ち上がるか

リーグフェーズ第1節から一昨季のファイナルと同じインテル×マンチェスター・シティのビッグカードが実現した Photo/Getty Images

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 昨年までの4チーム×8組のグループステージだとポット1に入る強豪は同組になることがなく、ラウンド16まで対戦することがなかった。新たなリーグフェーズでは同じポットのチームとも2試合を戦うので、第1節からマンC×インテルという2年前の決勝カードと同じ好カードが実現している(結果は0-0)。

 クラブランキングの上位2チームはマンC、バイエルンとなっているが、同じポット1に入るランキング4位のPSGはこの2チームと対戦する。他の対戦相手もアーセナル(ポット2)、アトレティコ・マドリード(ポット2)など、昨年までのレギュレーションではラウンド16以降でなければ実現しないような対戦ばかりだ。PSGにとっては厳しい組合せになったが、同じポットの相手とも対戦するのがこのレギュレーション最大の特長で、最大の魅力だといえる。

 リーグフェーズのあとにも変化がある。1位~8位がそのままラウンド16に進み、9位~24位の16チームはノックアウトフェーズ・プレイオフへまわり、ホーム&アウェイを戦って勝利した8チームがラウンド16進出となる。

 昨年までのレギュレーションだと32→16という絞られ方だったが、ノックアウトフェーズ・プレイオフがある今季は36→24という段階があり、より多くのチームにラウンド16進出のチャンスが生まれている。ノックアウトフェーズ・プレイオフ、ラウンド16ともに対戦カードは抽選で決まる。試合はもちろん、この抽選会も注目を浴びることになる。

 各チームが8試合を戦うリーグフェーズは、2025年1月29日まで開催される。2日後の1月31日にノックアウトフェーズ・プレイオフの抽選会が行われ、2月19日にはラウンド16が出揃う。それ以降は昨年までと同様、ホーム&アウェイのトーナメントで、3月12日にラウンド16が終わり、4月16日には準々決勝が消化されている予定。

 準決勝第1戦が4月29~30日、第2戦が5月6~7日。そして、大きな改革がなされた今シーズンのCL決勝は、5月31日にアリアンツ・アレナ(ミュンヘン/ドイツ)で行われる。記念すべき新時代の王者になるのはどこなのか? 試合数が増えたし、リーグフェーズ24位までラウンド16進出のチャンスがある。ひとつ、ふたつの取りこぼしは挽回できるレギュレーションで、底力があるチームのほうが有利だと考えられる。

いわゆる強豪とされるクラブは、24位以内には入ってくるだろう。リーグフェーズから好カードが目白押しだが、ノックアウトフェーズ・プレイオフ以降はその傾向がより顕著になることは間違いない。

ELもリーグフェーズに ローマ&マンUは出遅れた

ELもリーグフェーズに ローマ&マンUは出遅れた

マンチェスター・ユナイテッドも未だELで勝利がない。やはりヨーロッパは一筋縄ではいかなk Photo/Getty Images

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 ELも出場チームが32→36に拡大され、従来のグループステージが廃止されている。CLと同じくクラブランキングに応じてポット1からポット4に各チームが振り分けられ、スイス方式のリーグフェーズが行われる。ラウンド16までの流れも同じで、24位のチームまで勝ち上がるチャンスがある。

CL、ELに共通した順位決定方法も説明しておく。優先されるのは全8試合の勝点で、並んでいる場合は以下の順番で順位が決まる。得失点差、総得点、アウェイゴール数、勝利数、アウェイでの勝利数、リーグフェーズの対戦相手の勝点合計、リーグフェーズの対戦相手の得失点差合計、リーグフェーズの対戦相手の総得点、反則ポイント (レッドカード3、イエローカード1、イエローカード2枚での退場3)の少ない順、クラブランキングの高い順。

 この順位決定方式がどこまで使われるかわからないが、最後に「クラブランキングが高い順」とある。この部分だけをみても、強豪が負けにくいレギュレーションだといえる。そして、ELもラウンド16からはホーム&アウェイのトーナメントで開催され、決勝は5月21日にサン・マメス(ビルバオ/スペイン)でキックオフされる。CLと同じく、ラウンド16以降は好カードばかりになると予想される。

現状をみれば、第2節を終えてポット1でランキング上位の2チーム、ローマとマンチェスター・ユナイテッドにまだ勝利がない。ローマは第2節でポット4のエルフスボリ(スウェーデン)とアウェイで対戦したが、これはランキング最上位×最下位の対戦だった。結果は0-1でローマが敗れている。

 2試合を終えて、ローマは1分1敗で27位。マンUは2分けで21位となっている。昨年までの全6試合で争われるグループステージであれば、あと4試合で挽回しなければならない。しかし、新たなレギュレーションでは残り6試合あり、最悪24位以内に入っていればノックアウトフェーズ・プレイオフに進むことができる。

 苦しいスタートを切ったのは間違いないし、ラウンド16にストレートで進める8位以内に入ったほうがいいに決まっている。しかし、従来のレギュレーションより勝ち上がる可能性が広がっているのは紛れもない事実。ローマ、マンUが今後にどんな巻き返しを見せるか、ひとつの注目どころとなる。

文/飯塚健司

※ザ・ワールド2024年11月号、10月15日配信の記事より転載

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