一貫した指導の賜物なのか、バルサのカンテラからは次々とタレントが出てくる。トップチームの編成は世界的なビッグネーム+カンテラ出身の生え抜きが基本となるが、今季はその比率がだいぶカンテラ出身に寄っていて、しかも若い選手が多い。
現在、ラ・リーガは第13節を終えているが、バルサだけではなくサッカー界のネクスト・スターであるラミン・ヤマルは11試合先発、1試合途中出場で5得点している。昨季にトップデビューを飾り、バルサの最年少記録(ラ・リーガでの最年少スタメン、最年少得点など)をいくつも更新したヤマルは、プレイするたびに驚きを与えてくれている。
ヤマルがボールを持ったときに下手に足元に飛び込むと、間違いなくかわされる。巧みなボールコントロール、切れ味鋭い動きは常人離れしており、1人、2人の相手なら難なくかわしてボールを運ぶ。現代のサッカーは多くのチームがボールをロストしたときに素早くトランジションし、できれば相手陣内でボールを奪い返すことを狙っているが、ヤマルにボールが渡るとこれが不可能となる。勢いよくプレスにいく→ヤマルにかわされる→後方の守備が疎かになっている→前を向いたヤマルに自由にやられる。バルサと対戦すると、こうした流れで失点するケースが多い。
ドリブル、パス、フィニッシュ。どれも良質だが、とくにボールを受けるポジショニングが良く、ドリブルのコース取りが良い。常に自分のスタイル、リズムで仕掛けることで優位に立ち、実際にゴールへと繋げている。まだ17歳でありどんな将来が待ち受けているかわからないが、数々のスターを輩出してきたバルサである。ヤマルは長く活躍し、世界のサッカーファンを楽しませてくれるだろう。
最終ラインではセンターバックのパウ・クバルシが12試合先発、1試合交代出場となっている。ヤマルと同年代のクバルシはもともとジローナの下部組織でプレイしていたが、2018年にスカウトされバルサのカンテラ入り。足元の技術力、精度の高いパスでメキメキと頭角を現わし、昨季途中に17歳でトップデビューを飾り、レギュラーポジションを掴んでいる。
今季のバルサはハンジ・フリックのもと高いラインを保ち、前線からハイプレスをかけるスタイルを志向している。最終ラインの選手にはリスキーなポジショニングが求められるが、クバルシは臆することなく高いポジションを取り、攻撃につながる前を向いた状態でのインターセプトを狙っている。17歳のクバルシはこうしたスタイルで育ってきており、動きに迷いがなく、ボールコントロールに落ち着きがある。難しいことを普通にこなす技術力とメンタルを持っている。
また、マイボールになったら常に縦パスを狙っていて、ロベルト・レヴァンドフスキをはじめとする前方でプレイする選手にもこの意識が共有されている。絶妙なタイミングで絶妙なポイントに出される縦パスもクバルシが持つ特長のひとつになる。
左サイドバックのアレハンドロ・バルデは9試合先発、2試合に途中出場となっている。17歳で年齢制限のないバルサBに所属し、2021-22に18歳でトップデビュー。ジョルディ・アルバから世代交代し、21歳となったいますでにラ・リーガに60試合以上出場している。
バルデは左利きの左サイドバックであり、自分で前方にボールを運べる推進力がある。攻撃の意識が強くデフォルトのポジションが高く、バルデがドリブルをはじめるとチーム全体が前がかりになる。ボールタッチが巧みでスピードがあるため、縦へ突破するのか、ハーフスペースを目掛けて斜めに入っていくのかわかりづらく、DFは対応が難しい。
身体の使い方もうまく、重心が低く、相手をかわすときの手の使い方が若者とは思えない。どのタイミングで相手が飛び込んで来るかわかっていて、瞬時に腰を落として体重移動するとともに、うまく手を使って相手のパワーをかわす。ボールを失わないキープ力もあり、バルデがクロスを上げるときには信頼したチームメイトが3人、4人とPA内に入っていることが散見される。
バルサはチャンピオンズリーグのリーグフェーズ第3節でバイエルンと対戦したが、ハフィーニャが奪った先制点のキッカケとなる縦パスをレヴァンドフスキに入れたのがバルデだった。実際にゴールに繋がるパスやクロスを出せる。バルデは凄まじく攻撃的なフリック・バルサに欠かせない左サイドバックとなっている。