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[名選手の現在]便利なユーティリティ選手から起業家へ 環境に優しいバイオ原料で現役時代よりも大成功!?|theWORLD(ザ・ワールド)|世界中のサッカーを楽しもう!

[名選手の現在]便利なユーティリティ選手から起業家へ 環境に優しいバイオ原料で現役時代よりも大成功!?

アーセナルなどで活躍したフラミニ Photo/Getty Images

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#002 マテュー・フラミニ

MFマテュー・フラミニの選手としてのキャリアは、大成功というほどのものではなかったかもしれない。2004年にオリンピック・マルセイユからアーセナルへ渡ったが、プレイぶりはひとことで言えば“無難”。セスク・ファブレガスやジウベウト・シウバの控えという立ち位置であり、怪我人をカバーしサイドバックもこなすユーティリティぶりは披露したが、率直に言ってファンの心を鷲掴みにするような存在ではなかったと言っていいだろう。

ACミランでもサイドバックをそつなくこなし、アーセナルへ再び戻ってきた頃には頼れるベテランではあったが、何かを劇的に変えるような存在ではなかった。しかし、彼の才能はピッチの外にあったのだと、やがてサッカーファンたちは知ることになる。

フラミニは2008年に、「GFバイオケミカルズ」という会社を立ち上げている。2008年といえばアーセナルを離れ、ミランに加入した頃だ。これは家族やチームメイトにも内緒の行動だったようで、公になったのは2015年であった。
GFバイオケミカルズは、環境に優しいバイオ燃料の生産に使うレブリン酸を生産する世界初の企業だった。レブリン酸はサトウキビなどに含まれるデンプン由来の成分で、髪のトリートメントなどにも使われている。会社が設立された2008年ごろ、バイオ燃料としてレブリン酸に注目していた人は少なかったようだ。ようやくレブリン酸から燃料状のヒドロキシメチルフルフラール(糖や炭水化物の熱分解により生成される有機化合物)を生成する技術がウィスコンシン大学で開発されたというが、環境に配慮したバイオエネルギーにいち早く着目したフラミニの慧眼には恐れ入る。

2020年の『Guardian』では、環境問題に対するフラミニの思いが語られている。

「海辺で育った私は、幼い頃から海やビーチに漂うプラスチックの影響を見てきたんです。これは恐ろしいことで、何かを変えなければ、私たちが住んでいる場所は住みにくい場所になるだろうと気付かされました」

「私はいろいろなことに敏感で、好奇心旺盛でした。いつも自分自身に言い聞かせていたことは『将来サッカー以外の何かをするなら、持続可能性に関するものにしたい』ということでした」

エネルギーだけでなく、フラミニはレブリン酸を使ったさまざまな製品を、プラスチックなどの化石燃料由来の製品に代わって生み出すことに力を注いできた。2022年には『WIRED』で、石油由来の製品を植物由来に置き換えていくことの重要性も語っている。植物由来の溶剤を使えば、化石燃料由来のものと比較して二酸化炭素排出量を80%も削減することができるという。GFバイケミカルズはすでに植物由来の溶剤やポリオールなど200件近くの特許を取得しているようだ。

GFバイオケミカルズはアメリカにも事業拡大し、フラミニは現在CEOに。市場価値は数百億ドルともいわれている。フットボーラーのセカンドキャリアとしては類を見ない大成功で、フラミニの起業家としての才覚と情熱は本物だったと言える。




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