[特集/プレミア戦線異常アリ 04]TOP4に食い込むか!? 上位戦線をかき回すダークホースはこの3クラブ

 リヴァプールが頭一つ抜け出し、2位チェルシー以下は僅差となっていて1節ごとに順位変動がある。いまのプレミアはこうなっており、多くのチームに上位進出の可能性、CL出場権を得られる4位以内に入るチャンスがある。

とはいえ、プレミアの上位に入るのは当たり前だが簡単ではない。昨季はアストン・ヴィラが台頭して4位となり、42年ぶりにCL出場権を得るサプライズがあった。今季もまた、躍進するクラブはあるのだろうか──。いくつかの候補のなかから、上位戦線をかき回す3つのクラブ、新監督のもと安定感ある戦いをみせるブライトン、序盤から好調だったノッティンガム・フォレスト、新体制となったマンチェスター・ユナイテッドにフォーカスする。

攻撃力を増したブライトン 課題は下位との戦い方か

ウェルベックを中心に歓喜するブライトン。新監督を迎えて、攻撃の幅が広がっている Photo/Getty Images

昨季のブライトンはクラブ史上初めてヨーロッパリーグ(EL)に参戦して16強入り。一方で、プレミアでは一昨年6位から順位を落として11位でシーズンを終了。試合数の増加もあり三笘薫も含めてケガ人が出たことで思うようなシーズンを送れなかった。

成績だけが理由ではなかったが、ブライトンは監督交代を決断し、ザンクト・パウリをブンデスリーガ2部から1部へ昇格させた元アナリストでデータを駆使する31歳のファビアン・ヒュルツェラーを引き抜いて今季を迎えた。

すると、序盤5試合に2勝3分けという負けなしスタートを切った。第1節エヴァートン戦で奪ったチームのシーズン初ゴールは三笘薫で、新加入のヤンクバ・ミンテからのクロスに合わせて決めたものだった。試合にも敵地で3-0の快勝となり、早くも新監督のもと新戦力が機能していた。

6節チェルシー、10節リヴァプールには敗れたが、11節マンチェスター・シティとの一戦には1点のビハンインドを終盤になって逆転し、2-1で競り勝っている。ジョアン・ペドロが決めた同点弾は三笘が左サイドからお膳立てしたもので、マット・オライリーが奪った逆転弾は素早い縦パスをつないで中央を崩した。

ブライトンの攻撃は両サイドの選手がワイドに開き、そこから展開されることが多いイメージだが、新監督のヒュルツェラーは素早くフィニッシュまで持っていくことも求めていて中央を崩すことも狙っている。そのため、マンC戦の逆転弾のときもそうだったが、三笘がススーと中央へポジションを絞っているときが今季はいままで以上にみられる。

そうなると、空いたサイドのスペースに左SBのペルビス・エストゥピニャンやジャック・ヒンシェルウッドが走り込む定番パターンがあるとともに、人数が厚くなった中央を素早いパス交換で崩すこともある。左サイドの三笘だけでなく、右サイドで出場を重ねている新加入のジョルジニオ・ラターもこうした動きができてゴールにからんでいる。ブライトンの攻撃はバリエーションがあり、ゆえに上位をキープできている。

ただ、どこのチームもそうだが相手に守備組織をセットされてしまうと崩すことに苦戦している。15節を終えて6分け、とくに最近3試合は2分1敗となっており、勝点を伸ばせていない。この辺りに4位以内を確保する課題がありそうである。

気になるのは、6試合の引分けのうち2試合が2-0から追いつかれていることだ。ブライトンは“閉じて”試合を終わらせるのではなく、追加点を狙ってアグレッシブに戦う傾向にある。そのため時間の経過とともに守備に綻びが生まれ、したたかなプレミアの各チームに隙を突かれて失点し、勝点を失っている。

2点リードから追いつかれたのは9節ウルブズ、15節レスターの2試合で、いずれも下位チームに食い下がられたカタチだった。失点も80分以降と試合の終わらせかたが拙かった。現状、攻め倒すことはできていない。13節には最下位サウサンプトンにも1-1で引き分けている。ブライトンが4位以内に食い込むためには、上位との直接対決をモノにしつつ、こうした下位との対戦でしっかりと勝点を稼ぐ試合運びのうまさが必要になってくる。

堅守速攻のフォレストは多少のことでは崩れない

高さ&強さがあるウッドがカウンターをゴールで締めくくる Photo/Getty Images

 一昨年にプレミアへ昇格し、初年度16位、2年目の昨年は17位。連続して残留は果たしたが、これまでのノッティンガム・フォレストは選手の入れ替えが激しく落ち着きがなかった。実際、成績も振るわなかった。
ところが、今季は10節を終えた段階で5勝4分1敗と良いスタートを切った。その後にやや勢いが衰えたが、15節マンチェスター・ユナイテッド戦に3-2で競り勝ち、CL出場圏内をうかがう5位につけている。今季のフォレストは“なにか”をやってくれそうである。

チームを率いるのは昨季途中に就任したヌーノ・エスピリト・サントで、守備を意識した[4-2-3-1]で戦い続けている。強度の高いしっかりとした守備組織から、ボールを奪ったらシンプルに攻める。4節リヴァプール戦に1-0で競り勝ったが、このときの決勝点にフォレストのスタイルが表れていた。

劣勢が続く72分、ボールを持った相手を追いかけて1トップのクリス・ウッドが自陣PA付近まで下がって守備をする。その流れでCBのニコラ・ミレンコビッチがボールを奪い、モーガン・ギブス・ホワイトを経由して右サイドのアンソニー・エランガにボールが渡る。スピードのあるエランガが縦にボールを運び、逆サイドのカラム・ハドソン・オドイへパス。左サイドからカットインしたハドソン・オドイが右足ミドルシュートを決めたのだが、ボールを奪ってから約15秒で決まった良質なカウンターだった。

左右のワイドに配置されるエランガ、ハドソン・オドイ。トップ下で攻守をつなぐギブス・ホワイト。そして、1トップを務めるウッド。今季のフォレストは各選手が適材適所で自分の能力をノビノビと発揮している。最終ラインでは新加入のミレンコビッチ、アレックス・モレノらが堅守を支えており、15節を終えて失点18。これは、リヴァプール、アーセナルに次いでリーグで3番目に少ない数字となっている。

こうしたチームスタイルに合ったウッドが1トップにいるのが好調の要因になっている。強さ&高さがある“9番”タイプのウッドはニュージーランド代表でも攻守両面で身体を張った献身的なプレイをみせる。少ないチャンスをモノにする決定力もあり、昨季は31試合14得点だったが今季はすでに15試合10得点だ。ウッドの得点数が増えるのに比例して、フォレストの勝点も伸びていくだろう。

11節ニューカッスル、12節アーセナルに連敗したが、今季のフォレストはズルズルとはいかなかった。13節イプスウィッチ戦にウッドが決めたPKを守り切って1-0で勝ち、15節マンU戦には点の取り合いのすえ3-2で競り勝っている。劣勢や苦戦には耐性があるだけに、少々のことでは崩れない。フォレストはまだまだ上位戦線をかき回しそうだ。

監督交代を決断したマンU アモリム体制で浮上するのか

マンUをアモリムがどう変えるか。上位を狙える選手は揃っている Photo/Getty Images

 現状は中位に沈むが、選手の顔ぶれを考えればマンチェスター・ユナイテッドの動向も気になるところだ。前任者のエリック・テン・ハーグは開幕当初から勝点を伸ばせず、10月下旬に退任となった。スポルティングCPからルベン・アモリムを引き抜いたが、これでチームがどう変わっていくのか注目される。

「いまの状況は変わるはず。チーム力を高めるためには、継続性が大事。同じことを続ける時間が必要だ」

これは15節フォレスト戦に2-3で敗れたあとのアモリムのコメントで、すぐに結果は出ないかもしれない。実際、12節イプスウィッチ戦から指揮を執るが、プレミアでは1勝1分2敗となっている。ELではボデ・グリムトに3-2で勝利したが、この成績が続くようだとマンUの監督ではいられないだろう。アモリムにとって大事なのは、これからの数試合で未来への可能性を示すことになる。

 一昨年にリーグカップ、昨季はFAカップを制したように、チームに高いポテンシャルがあるのは間違いない。アレハンドロ・ガルナチョ、アマド・ディアロ、コビー・メイヌーなど若くて豊かな才能を持つ選手たちがいる。コンディション万全なら“違い”をみせることができるメイソン・マウントもいる。同じポルトガル国籍のディオゴ・ダロト、ブルーノ・フェルナンデスの存在もアモリムの考えを浸透させるうえで助けになると考えられる。

 マンUはこれまで[4-2-3-1][4-4-2]で戦ってきたが、アモリム就任後の試合は[3-4-2-1]で戦っている。いろいろな選手を起用しており、最終ラインならマタイス・デ・リフト、リサンドロ・マルティネス、ヌサイル・マズラウィ、ハリー・マグワイアに加えて、どちらも負傷明けのタイレル・マラシア、レニー・ヨロもピッチに立たせている。

 中盤、前線の選手層もマンUは分厚い。試合数をこなすうちにアモリムがどんな最適解、組合せを見出すか。まもなく冬の移籍市場もオープンとなる。マグワイアやマーカス・ラッシュフォードは売却候補になっているとの報道もある。シーズンが終わるころ、アモリムが率いるマンUはどんな姿をしているのか……。

 そういった意味で、13節エヴァートン戦では良いところばかりが出た。右サイドのワイドなポジションに起用されたディアロが攻守に活躍し、3ゴールに絡んだ。守備におけるプレスの強度、ボールを前に運ぶ勢い、ラストパスの精度、どれも質が高く、ディアロがボールを持ったときのまわりの反応も早かった。

 41分の2点目はディアロが右サイドでボールを奪ったところから生まれたが、得点したジョシュア・ザークツィーに加えて、ラッシュフォード、B・フェルナンデス、さらには起点となったディアロもPA付近にいた。チャンスだと判断したときは、人数をかけて一気呵成に攻める。今後のマンUはこうしたシーンが増えると予想できる。

いまは中位にいるが、上との勝点差は小さい。アモリムに率いられたマンUがどこまで順位を上げてくるか。良い方向へチームが変化したなら、4位以内に食い込む戦力を揃えているのは間違いない。

文/飯塚 健司

※ザ・ワールド2025年1月号、12月15日配信の記事より転載

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