矢野(松山北)はまだ1年生 今大会の経験を生かしてほしい
準々決勝で対戦した前橋育英と堀越。両チームとも良い選手が多かった
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冬の風物詩といえば、やはり全国高校サッカー選手権ですね。会場で数試合を観戦するなか、今年もキラッと光るものを持った選手に出会うことができました。名のある選手はすでに各種媒体で紹介されているので、ここでは個人的に気になった選手を紹介します。
まずは解説させていただいた龍谷富山×那覇西からひとりずつ。宮林渉(龍谷富山)はCBを務めていましたが、もともとFWからコンバートされた選手です。負けん気が強く、攻撃的な姿勢が感じられました。ヘディングを含めた対人プレイに強く、ずっとCBをやっていたのではと感じたぐらいです。負けん気の強さが裏目に出てイエロー2枚で退場となりましたが、気持ちがこもったプレイをみせてくれました。
チメズ・ビクター・チュクンマ(那覇西)は身長186センチのアンカーで、スケールが大きく沖縄県予選では毎試合得点(5得点)していました。守備ではボールを回収することができて、攻撃では正確なパスを散らすことができる。チームのリズムを作っていて、攻守の心臓だなと感じました。物怖じすることなく淡々とプレイしていたのも印象に残りました。チメズは進学先の大学で化けるかもしれません。
愛工大名電は[4-4-2]でダイヤモンドの中盤でしたが、右サイドの蒲地壮汰はスピードがあって仕掛けられるタイプで、PK戦で敗れた2回戦の前橋育英戦でも“違い”をみせていました。前への推進力があり、センスを感じました。1-2で迎えた終了間際に得たPKではキッカーを務め、重圧がかかるなかしっかりと決めています。地元では名のある選手かもしれませんが、選手権ではこうした選手に出会う楽しさがあります。相当、伸びしろがある選手だなと思いました。
3回戦まで勝ち上がった松山北の矢野泰聖も気になりました。1年生の左ウィングバックでまだ粗削りでしたが、そのスピードは1-6で敗れた堀越戦でも十分に通用していました。後半途中から前線にポジションチェンジしていたので、もともとはFWなのかもしれません。どちらのポジションでもとにかく桁違いのスピードがあり、輝いていました。ボールを持つと「オッ」と思いましたね。最後に喫した堀越戦の敗戦は、1年生にとっていい経験になったと思います。この冬に感じたことを今後にどう繋げてくれるか、ちょっと楽しみです。
白井(前橋育英)のドリブルは観衆をドッと沸かせていた
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矢板中央の「10番」を背負った堀内凰希は両足を器用に使えるタイプで、ドリブルで相手を翻ろうする場面が目に留まりました。足元の技術力が高く、頑張ることもできる。3回戦の上田西戦では立ち上がりに右サイドから仕掛け、倒されてPKを獲得しています(得点にはならず)。矢板中央は堅守のイメージですが、今年はこの堀内凰希などうまい選手がいました。3回戦で敗れましたが、私の記憶に残りました。
堀越も2試合観戦させていただきましたが、中盤に君臨する渡辺隼大が気になりました。攻守のバランスが取れて、守備では厳しくいってボールを奪うことができる。攻撃におけるパスの配球も精度が高く、マンチェスター・シティのロドリタイプのプレイメイカーだなと感じました。堀越はうまい選手が多く、ダブルボランチを組む谷口悠成もいい選手でした。そうしたなかでも、渡辺隼大からはサッカーIQの高さを感じました。
帝京大可児も個性ある選手が多く、どこからでも得点できるチームでした。私が「オッ」と思ったのはボランチの松井空音で、中盤でバランスを取りつつミスが少なくしっかりと正確な縦パスを前に入れていました。3回戦で前橋育英に2-3で競り負けましたが、前半にGKが退場するなか勝っていてもおかしくない戦いをみせました。帝京大可児は去年よりうまい選手が揃っていました。松井空音はチームの心臓となり、まわりの良さを引き出していたと思います。
この一戦に勝利して勝ち進んだ前橋育英では、途中から入ってきた白井誠也のドリブルが目を引きました。バックスタンドで観戦したのですが、「あの7番すげぇな」「キレキレだな」という声が聞こえてきました。プレミアリーグで見たときから思っていましたが、ドリブルで違いを作れて、ドリブルで観衆を沸かせることができる選手です。
東海大相模の左SB、ロングスローという武器を持つ佐藤碧も印象に残りました。左利きでボールの置きどころがよく、プレイがスムーズで効果的にボールを前に運ぶことができていました。身長はそんなありませんが、すごくクレバーです。ひょっしたらボランチもできるのではないでしょうか。
ここに紹介した以外にも、印象に残った選手は数多くいます。うまい選手がたくさんいました。バックスタンドでも観戦したのですが、OBや保護者の方々の声、ブラスバンドの演奏が直に心へと響いてきました。やっぱり選手権っていいなと、つくづく感じた年末年始になりました。
構成/飯塚健司
※ザ・ワールド2025年2月号、1月15日配信の記事より転載