2月24日、東京・有明アリーナでプロボクシング、WBA世界バンタム級タイトルマッチ、王者・堤聖也対、同級4位比嘉大吾の試合が行われた。
堤は、試合終盤にかけても落ちないスタミナとアグレッシブなファイトスタイルでここまで勝ち上がってきたボクサー。試合前の戦績は14戦 12勝 (8KO) 2分と無敗を誇る。2024年10月13日に行われた前王者・井上拓真とのタイトルマッチに挑戦し、判定勝利で王座を奪取。この試合が初の防衛戦となった。
対する比嘉は元WBC世界フライ級王者。2度防衛を果たすものの、その後、体重超過で王座剥奪となり、バンタム級で再起を図った。こちらもアグレッシブなファイトが魅力のボクサーで、試合前の戦績は25戦21勝19KO3敗1分と堤に負けない高いKO率を記録。前回、WBO世界バンタム級王者の武居由樹に挑戦し、判定負け。引退を表明していたが、同い年の堤から試合のオファーを受けてこのリングに立った。
試合は、1回から緊張感のある一進一退の攻防が続く展開に。堤はジャブからの探り合いで、比嘉も時折鋭いパンチを繰り出す。2回から堤に積極性が増し、比嘉がカウンターを狙う場面が多く見られるようになる。4回には比嘉のバッティングにより堤は右目上をカット。王者の堤は、その後も比嘉のパンチを受けて顔面を真っ赤な血で染めるが、手数やヒット数では上回った。
回を追うごとに攻撃に激しさが増す両者の戦い。すると9回に試合が大きく動く。堤が積極的に前へ出る中、比嘉はカウンターや連打で応戦。互いに一歩も引かない接近戦を演じる中、残り1分15秒で比嘉の左フックが王者の顔面を捉え、ダウンを奪うことに成功する。
腰から砕け、尻もちをついた堤。ただ、大丈夫大丈夫、と言わんばかりに手を軽く挙げて不適な笑みを浮かべる。その後、立ち上がってファイティングポーズを取って、この試合最大の窮地を脱した。
そしてドラマはまだ終わらない。この好機を逃さんとばかりに比嘉が仕留めにかかる。堤は下がりながらも応戦し、両者ともにパンチを当て続ける中、残り30 秒で、今度は堤の右ストレートが比嘉の顔面を見事に捉え、ダウンを奪い返す。比嘉は前進する勢いのまま、突っ伏して倒れ、よろけながらもなんとか10カウントまでに立ち上がると、その後の20秒ほどを耐え抜き、壮絶なラウンドを終えた。
その後は、12回まで堤が前へ出て、比嘉がカウンターを狙う展開が続く。だが両者に決定打はなく判定へ。結果はドローとなり、王者・堤の防衛成功となった。
試合終了直後に互いを称えあった二人。その際、堤は比嘉に対し「最高だよ。お前」と伝え、リング上でのインタビューでも「大吾、ありがとう。強かったよ」と相手に感謝を述べた。同学年の比嘉とは高校時代から仲が良く、食事をともにするほどの仲でもあった。
比嘉は試合後の会見で「記憶が飛んでいる」と脳へのダメージを語り、今後のキャリアについては「もういいかなと思いますね。ただでさえ頭が悪いんでこれ以上、頭を打たれたくない」と引退を示唆する言葉を漏らした。