サッカー界で増えるハムストリングの故障 ハードすぎる日程から選手をどう守る「選手の負担が大幅に増大している」

ピッチに選手が座り込むシーンが目立つ photo/Getty Images

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1試合あたりのエネルギーも増している

サッカーでは試合中に選手がピッチに座り込み、そのままトレーナーに支えられながらピッチを後にする光景も珍しいものではない。筋肉系の故障でそうした事態が起きてしまうわけだが、英『The Guardian』は選手にかかる負担とどう向き合うべきかサッカー界全体で考えるタイミングだと取り上げている。

例えばイングランド・プレミアリーグでは、第26節が終了した段階で負傷者のうちの24%がハムストリングの故障だという。昨季の同時期も全体の26%がハムストリングの負傷となっていたため、昨季とほぼ変わらないペースだ。

またスウェーデンのリンシェーピング大学チームの調査によれば、21世紀に入ってからの欧州サッカー界におけるハムストリングの負傷率は12%から24%に倍増しているというのだ。
筋肉系の故障に詳しいアーネスト・シルダーズ教授は、1試合での選手の負担度が増していると問題視する。

「選手の負担が大幅に増大している。ハムストリングは全力疾走の際に最も活性化される部位であり、高強度を保つために不可欠な筋肉だ。また、加速に加えて減速の場面でも極めて重要になる。現代のチームは相手に素早くプレスをかけ、減速し、そこからさらに加速するといったプレッシングをかけることが多い。そのため、常にハムストリングに負担がかかっている。ハムストリングを1度負傷すると、繰り返してしまうリスクが高まる」

チェルシーでフィジカルトレーナーを務めたファーガル・ケリン氏も同様の考えで、選手がリカバリーする時間がほとんどないと語る。

「例えば最終ラインを高く設定した場合、DFの選手は背後にボールが蹴り込まれればすぐさま方向転換して30〜40mほど全力疾走することになる。さらに前からプレスをかけるシステムと組み合わさることで、ハムストリングの負傷に繋がる状態が出来上がってしまう。ハムストリングの負傷において最も注意すべきは疲労とスプリント距離だと考えている。試合数が増えれば増えるほど、リカバリーに充てる時間はなくなってしまうのだ」

試合数の多さは現代サッカーの問題点の1つであり、加えて選手の身体能力が高まっていることもハムストリングに負担をかける一因になっているとの見方もある。激しい運動エネルギーに体がついていかないケースがあるのだ。

トップクラブであればあるほど試合数は多くなり、選手がリカバリーする時間は限られる。いかに選手を守っていくのか。サッカー界全体で考えなければならないテーマだ。

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