[特集/躍動するサムライ18 01]得点という結果で違いを作る! 7人のサムライ・アタッカー

 数年前では考えられなかったが、いまは毎週末にどこかのリーグで日本人選手がゴールを奪っている。プレミアリーグでは三笘薫がここにきて調子を上げ、年が明けてから4ゴールをマーク。ラ・リーガでは久保建英が同じく観衆を沸かせるゴラッソを連発。スコットランドでは前田大然がいよいよ無双状態に入り、公式戦合計27ゴールとなっている。

 ブンデスリーガでも日本人選手の活躍が目立つ。堂安律が8得点4アシスト、町野修斗が7得点1アシスト。どちらもチームのトップスコアラーで得点源として地位を築いている。さらに、リーグ・アンでは日本代表の両翼である伊東純也、中村敬斗がそのままスタッド・ランスの攻撃を支え、多くのチャンスを生み出している。欧州を席巻する7人のサムライ・アタッカーの現状を紹介する。

好調を維持する三笘&久保は今夏にメガクラブへ移籍か

好調を維持する三笘&久保は今夏にメガクラブへ移籍か

今季で欧州キャリアハイも見えてきた三笘。ビッグクラブからの興味も噂されるようになった photo/Getty Images

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 三笘薫がプレミアリーグ第25節のブライトン×チェルシーで奪ったゴールは、実にセンセーショナルだった。拮抗した展開で迎えた27分、GKバルト・フェルブルッヘンがロングフィードを前線に送る。ここに走り込んだのが三笘で、後方から落ちてくるボールを右足で柔らかくトラップし、正確に足元へ収める。さらに2タッチで相手DFをかわし、PA外から右足を振り抜いて先制点を奪ってみせた。

 難易度が高かったこのゴールは2月のプレミアリーグ月間最優秀ゴールにノミネートされている。また、先行してイギリス『BBC』の人気サッカー番組である『Match of the Day』の2月の月間最優秀ゴールに選出されており、世間に与えた衝撃の大きさがうかがえる。

 無論、三笘の活躍はこのワンプレイに限られたものではない。チームではフィールドプレイヤーで最多となる25試合に先発出場しており、7得点はジョアン・ペドロの8得点に次ぐ数字だ。残り試合数を考えると2021-22にユニオン・サン・ジロワーズで記録した7得点、2022-23にブライトンで記録した7得点を上回ることが濃厚で、欧州でのキャリアハイとなるシーズンになりそうだ。
 ブライトンとの契約は27年6月まで残っているが、メガクラブが獲得を狙っているという話題が尽きない。今冬にはサウジから巨額オファーがあったというニュースが流れ、チェルシーがリストアップしているという話もある。三笘は今夏の移籍市場の目玉選手のひとりになっている。

 ラ・リーガでは久保建英がいままで以上に覚醒し、不可解なベンチスタートなどがありながらもチーム最多となる5得点でソシエダの攻撃を引っ張っている。精度とバリエーションを増しているのが右サイドからの突破で、第25節レガネス戦では真骨頂ともいえるゴールを決めている。

 後半開始直後の48分、右サイドのタッチライン際でボールを持った久保が左足で小刻みにボールを運び、相手との間合いを計る。圧巻だったのは次の瞬間で、対峙するDFを瞬間的に動いて股抜きでかわしてPA内に侵入した。このときゴール前には3名の味方が入り込んでいたが、久保はさらにカットインしてシュートを選択。相手にわずかにかすったボールが逆サイドのゴールに吸い込まれ、テクニックを見せつけたゴールが生まれた。

 久保はラ・リーガだけではなく、ELでも2得点2アシストでチームのベスト16進出に貢献している。迎えたラウンド16ではマンチェスター・ユナイテッドと対戦し、ホームでの第1戦では厳しいマークを受けながらも粘り強くプレイした。多くのチャンスを生み出すことはできなかったが、CKのキッカーを務めて相手ハンドでPKを得たシーンがあった。

 すでに久保のクオリティの高さは欧州で知られており、昨シーズンの夏にはリヴァプールが獲得に動いているという情報もあった。これは継続案件で、久保をリストアップしているのはリヴァプールだけでない。同じラ・リーガのアトレティコ・マドリードが狙っているとの話もある。三笘と同じく、今夏の動向が注目されている。

前田が公式戦合計27ゴール! ドイツでは堂安&町野が躍動

前田が公式戦合計27ゴール! ドイツでは堂安&町野が躍動

CLバイエルン戦では2ndレグに望みをつなぐ得点を奪った前田。バイエルンの選手たちは前田の走力に驚愕したという photo/Getty Images

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 スコットランドではリーグ4連覇を目指すセルティックのなかで、前田大然がスコティッシュ・プレミアリーグ12得点7アシスト、スコティッシュ・カップ5得点、リーグカップ6得点1アシスト、CL4得点1アシストとハイペースで得点に絡んでいる。顕著なのは迷いのない思い切りのいいフィニッシュで、しっかりと足を振れている。

 CLではプレイオフでバイエルンと対戦したが、ホームでの第1戦で0-2から勝ち上がりの可能性を残す1点を返している。このゴールは鋭い得点嗅覚が発揮されたもので、CKのチャンスにファーサイドからするするとポジションを変え、いつの間にかニアサイドに現れてヘディングで決めたものだった。

 さらに、前田の運動量がバイエルンにとっては衝撃だったようで、試合後にロッカールームで選手たちの間で「彼はどれだけ走るのか」と話題になったという。前田の運動量、スピードはわれわれにとってはお馴染みだが、CLで結果を残すことでここにきてより広範囲にその存在が知られてきた感がある。

 前田とセルティックの契約は、27年6月末まで残っている。しかし、いま現地ではそこまで引き留めるのは難しいという雰囲気になっている。今冬の古橋亨梧に続いて、前田も5大リーグへとステップアップを果たすかもしれない。

 ブンデスリーガでは欧州に渡って8年目のシーズンを迎えた堂安律が、クラブ史上初のCL出場を目指すフライブルクの攻撃をけん引している。[4-2-3-1]の右ウィングを任され、守備では前線からの献身的なプレスで後方を助け、攻撃ではチーム最多となる8得点に加えて、4アシストで多くの得点に絡んでいる。

 フライブルクは第23節ブレーメン戦に5-0で大勝したが、堂安はこの試合で2得点している。1点目は相手陣内で鋭い出足でボールを奪い、ショートカウンターにつなげて味方からのリターンパスを受けてPA外から冷静に左足でミドルシュートを決めたもの。2点目は左サイドからのクロスに合わせてゴール前に走り込み、相手DFの前に身体を入れて右足で合わせたもの。得点を“感じる”能力、正確なフィニッシュが発揮された2得点であり、チームに欠かせない選手となっている。

 数字にもそれは表れていて、ここまで25試合出場でプレイ時間は2079分となっている。GKも含めてチーム最多で、コーチから昇格して今季から指揮を執るユリアン・シュスター監督からしっかりと信頼を得ていることがわかる。

 フライブルクも堂安も、まだCLに出場したことがない。このまま初出場に導いたなら、クラブのレジェンドとして名を残すことになる。一方で、もし逃したとしても、堂安は引き抜かれることが予想されている。移籍先として、現地メディアではフランクフルトなどの名前があがっている。

 残留争いの渦中にいるキールでは、町野修斗が7得点2アシストで存在感を示している。試合によって1トップ、2トップを使い分けるなか、町野は前線だけでなく、シャドーストライカー、左ウィングなどを務める。運動量があり、献身性があってなんでもできる万能性があるため、マルセル・ラップ監督にとって選択肢が多い有難い存在になっている。

 5-1で大勝した第15節アウグスブルク戦は2トップの下でシャドーストライカーを務め、左右に流れて前線を活性化。左サイドからのクロスで先制点をもたらしたのを皮切りに、2得点2アシストで勝利に貢献した。チームからの信頼がうかがえたのが39分に奪ったゴールで、PAのやや外、左寄りでFKを掴むと、町野がキッカーを務めた。そして、右足で直接叩き込んで期待に応えている。

 町野とキールの契約も27年6月まで。ただ、現在17位のキールはこのままだと自動降格となる。そうなったときは、移籍金を残して新天地へと移る可能性がある。今冬にはリーグ・アンのトゥールーズが興味を示しているとの情報があった。町野もまた、シーズンオフに移籍市場を賑わせるかもしれない。

伊東&中村は期待されている Sランスを残留に導けるか

伊東&中村は期待されている Sランスを残留に導けるか

代表でも両サイドを務めることがある伊東&中村のコンビネーションは出色。チーム残留の鍵になることは間違いない photo/Getty Images

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 伊東純也、中村敬斗は日本サッカー界が誇る2本の“鎗”で、スタッド・ランスでも多くの得点チャンスを作り出している。作り出しているし、実際に得点にも絡んでいるが、チームは第12節から14試合連続で勝ちがなく、現在は6連敗中と泥沼にハマっている。順位もどんどん下がって残留争いに絡んでいる。ここからいかに巻き返し、降格を回避するか。両名に期待されるのは、チームを救うゴール、勝利に繋がる決定的な仕事となる。

 低迷するスタッド・ランスは得点力が乏しく、第25節を終えて26得点となっている。こうしたチームのなかで、伊東が4得点3アシスト、中村が8得点1アシストだ。伊東の3アシスト、中村の8得点はチーム最多で、両名がいなかったらこのチームはもっと苦戦していたかもしれない。

 第19節で首位を独走するパリ・サンジェルマン戦に1-1で引き分けたように、ポテンシャルはある。そして、この試合で伊東&中村は決定的な仕事をしている。1点のビハインドで迎えた56分、自陣左サイドでGKからのパスを受けた中村が縦へボールを運ぶ。前方にはスペースがあり、右サイドから伊東が斜めに走ってくる。ここに中村が縦パスを出し、伊東がPA内に侵入してゴール前に折り返す。このボールをマーシャル・ムネツイが落とすと、しっかりとパス&ゴーをしていた中村が右足でフィニッシュし、同点ゴールをマークして勝点1をチームにもたらしている。

 スタッド・ランスのサポーターは勝点に繋がる結果を求めており、いまのチーム内でこの期待に応えられるのはやはり伊東と中村になる。キレとスピードがあるドリブルでチャンスメイクするとともに、伊東なら豪快かつ思い切りの良いフィニッシュ、中村ならテクニカルで正確なフィニッシュでゴールネットを揺らす。こうしたシーンが増えたなら、スタッド・ランスは残留を確実なものにできる。

 現状を変えるべく、両名がシーズン終盤にどんなパフォーマンスをみせるか。いかにチームを蘇らせるか。苦しい状況だからこそ、さらに評価を高めるチャンスでもある。

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電子マガジン「ザ・ワールド」No.303 躍動するサムライ18

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