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[特集/Jリーグ新時代 01]指揮官交代は吉か凶か? 8人の新監督がJ1に波乱を呼ぶ|theWORLD(ザ・ワールド)|世界のあらゆるスポーツを楽しもう!

[特集/Jリーグ新時代 01]指揮官交代は吉か凶か? 8人の新監督がJ1に波乱を呼ぶ

サッカーに限らず、何事においても次の時代へと歩みを進めるためには新陳代謝が大事で、さまざまな理由のもと人事異動や世代交代が不定期に行われる。今季のJ1はそのタイミングを迎えたチームが多く、8チームが新たな指揮官を迎えている。

鬼木達(鹿島)、リカルド・ロドリゲス(柏)、松橋力蔵(FC東京)、長谷部茂利(川崎)、スティーブ・ホーランド(横浜FM)、樹森大介(新潟)、アーサー・パパス(C大阪)、金明輝(福岡)。タイトル奪還を求められているチームがあれば、継続性のある強化を求められているチームもある。

J1は大混戦となっているが、新監督を迎えた8チームはどのようなスタートを切ったのか。着実に勝ち点を得ているチームに、苦戦しているチーム。開幕からここまで、早くも明暗が分かれている。指揮官を交代した各クラブの現状を探る。

王座奪還を目指す鹿島と川崎はクラブ出身者をそれぞれ招聘

王座奪還を目指す鹿島と川崎はクラブ出身者をそれぞれ招聘

川崎で一時代を築いた鬼木監督は、“常勝軍団”鹿島を率いることに。久々のタイトル奪取を託された Photo/Getty Images

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国内3大タイトル(Jリーグ、ルヴァン杯、天皇杯)をもっとも多く獲得していて、かつては常勝軍団と呼ばれた鹿島だが、8年連続で国内無冠となっている。こうした状況を改善するべく、昨季途中にクラブレジェンドのひとりである中田浩二が強化責任者(フットボールダイレクター)となり、常勝時代にプレイしていた鬼木達監督を招聘し、レオ・セアラ、小池龍太などを獲得。松村優太、荒木遼太郎のレンタルバックなども行われた。

王座奪回を目指す鹿島の決断は開幕からここまで良い結果につながっていて、しっかりと上位をキープしている。レオ・セアラ、鈴木優磨の2トップに、中盤のワイドが右に小池、左に松村かチャヴリッチ。守備的MFは樋口雄太、柴崎岳、舩橋佑、知念慶でやりくりし、最終ラインが右から濃野公人、植田直通、関川郁万、安西幸輝、守護神に早川友基という[4-4-2]が基本布陣になっている。そして、鬼木監督のもと各選手が厳しくファイトする強度の高い攻撃的なサッカーを続けている。

得点ランキングのトップにいるレオ・セアラ(8得点)の決定力の高さはもちろん、俊敏性のある小池、松村の貢献度が高く、J1で2番目に多い16得点となっている(9節終了時点)。クラブ生え抜きの舩橋は順調に成長し、レギュラーポジションをつかみつつある。大卒3年目の師岡柊生も短いプレイ時間で2得点と結果を出している。徳田誉がU-20代表の遠征で負傷してしまったが、前線には田川亨介もいる。さらに、絶大なる存在感を誇る鈴木がドンと構えている。
中盤、前線の選手層が厚く、誰がピッチに立っても強度が落ちない。チームを率いる鬼木監督は選手としても監督としても優勝経験が豊富だ。勝つ術を知っている指揮官のもと、現在の得点力を維持できたなら鹿島が優勝争いから姿を消すことはないだろう。

川崎はアジアチャンピオンズリーグ・エリート(ACLE)を戦っていて試合数が多く、他クラブよりもチーム作りを進める時間が取れない。現役時代を川崎で過ごし、指導者となって帰ってきた長谷部茂利監督は、難しいミッションに挑んでいる。

ただ、チームにはこれまで作り上げてきたボール保有率を高く、ときに素早く、ときにしっかりとビルドアップして攻撃するスタイルが植えつけられている。即戦力の補強は伊藤達哉、大関友翔(レンタルバック)の2人だけだったが、もともと選手層が厚く、ケガ人が戻ることで誰が出場してもハイレベルなサッカーを維持している。

継続性を基本に、長谷部監督は布陣を[4-2-3-1]にほぼ固定。とくに中盤には良質な選手が揃っていて、7節FC東京戦に3-0の快勝を収めたあとに「これまでない4枚のボランチというシステムでやりたいぐらいです」(長谷部監督)という言葉を残している。この日は山本悠樹、大島僚太のダブルボランチでスタートし、河原創、橘田健人のダブルボランチで終了を迎えている。「同時に4人は出せないので、試合ごとに勝つための2人をコーチと選んでいます」とは長谷部監督で、他チームが羨む贅沢な戦力となっている。

前線には山田新とエリソンがいて、ウィングにもマルシーニョ、家長昭博、伊藤、宮城天、山内日向汰、瀬川祐輔とコマが揃っている。おもに脇坂泰斗が務めるトップ下のポジションもカバーできる選手が複数いる。シーズン序盤からリーグ戦、ACLEを戦う過密日程をこなしているが、長谷部監督はチームをうまくマネジメントしており、J1では上位をキープし、ACLEでも8強入りしている。

ここ数年の川崎はケガ人が多く、序盤は小林悠が戦線離脱していた。9節町田戦では橘田、ジェジエウが負傷交代となった。それでも、長年かけて築き上げてきた確固たるスタイルがあり、監督が変わっても方向性は決してブレていない。川崎もまた、上位で戦い続けると考えられる。

短期間で変化した柏 福岡は強度がアップ

短期間で変化した柏 福岡は強度がアップ

はっきりとしたプレイモデルを提示し、柏を生まれ変わらせようとしているロドリゲス監督。ポゼッションスタイルで結果が出ている Photo/Getty Images

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リカルド・ロドリゲス監督を招聘した柏は、守護神の小島亨介をはじめ多くのポジションに今季加入した選手が配置され、短期間で昨季とは違うチームに仕上がっている。新たな指揮官が志向するのはボールを大事にするポゼッションサッカーで、最終ラインからていねいにパスをつなぐスタイルで着実に勝ち点を積み重ねている。

最終ラインは基本3バックで、古賀太陽、原田亘、田中隼人、犬飼智也というパス精度の高い選手のなかからセレクトされる。開幕当初レギュラーポジションをつかんでいた杉岡大暉は負傷してしまったが、十分にやり繰りできている。

中盤の守備的なポジションでは運動量が多くてファイトできる原川力と、身長185センチの大型ボランチである熊坂光希が目を光らせている。両名ともに自分でボールを運べるし、パスの精度も高い。熊坂は下部組織出身で大学を経て戻ってきた有望株で、現在進行形で評価を高めている。日本代表の森保一監督も注目する今後のキャリアが楽しみな選手のひとりだ。

中盤の攻撃的なポジション、前線にも良質な選手が揃っている。小屋松知哉、ジエゴ、木下康介、細谷真大、垣田裕暉といった既存選手に加えて、小泉佳穂、久保藤次郎、仲間隼斗、渡井理己など多くの新加入選手が出場を争っている。リカルド・ロドリゲス監督は選手の見極めが的確で、絶対的なエースだった細谷がベンチスタートとなる試合があるなどいまの柏には競争がある。

監督交代に加えて、マテウス・サヴィオ、関根大輝、立田悠悟など主力の流出があったが、今季の柏は指揮官が志向するサッカーと選手たちの特長がマッチしている。昨季終盤まで残留争いにからんだのが遠い昔に思える。やり方によっては短期間で劇的に変わることを柏が証明している。

福岡は難しい状況で今季を迎えていた。チームをJ1昇格へ導き、ルヴァン杯優勝をももたらした長谷部監督が退任し、前寛之、宮大樹、ドウグラス・グローリなど守備を支えていた選手たちも去った。大きな転換期を迎えて、町田でコーチを務めていた金明輝監督を招聘した。

新監督に加えて、上島拓巳、見木友哉、名古新太郎など新たに加入した選手も多く、開幕3連敗とスタートダッシュには失敗した。しかし、この3敗はいずれも1点差の惜敗で、悲観する内容ではなかった。金明輝監督は各選手にしっかりと戦うことを求めていて、攻守両面で高い強度を維持して戦うことができていた。勝利にはつながらなかったが、新たな方向性は示されていた。

結果が出ないとどうしても選手は不安になってくるが、福岡は4節神戸戦に1-0で競り勝ち、新体制で初勝利を収めた。すると、この一戦も含めて5勝1分けとし、一気に順位を上げている。多くの試合でボール支配率では負けているが、サッカーは支配率を争う競技ではない。相手ボールには厳しくプレッシャーをかけ、マイボールになったらシンプルに素早くゴールを目指す。支配率にこだわらないスタイルで福岡は勝利を重ねている。

だからといって、主導権を握るサッカーができないわけではない。6節FC東京戦は前半からペースを握り、相手を押し込んだ展開で試合を進めた。必死に守る相手をなかなか崩せなかったが、最後の最後まで勝利を目指して戦い、95分に安藤智哉が決勝点を奪って勝ち点3をもぎ取っている。

9節を終えて6位。新監督のなかでは、長谷部監督の川崎(3位)、鬼木監督の鹿島(4位)、リカルド・ロドリゲス監督の柏(5位)に続く順位につけている。金明輝監督が率いる福岡は“形”を作ることではなく、勝利することにこだわっている。この戦う集団と対戦するときは、相当な覚悟で臨まないとやられることになる。

横浜FMを苦しめる過密日程 C大阪は新チームを構築中

横浜FMを苦しめる過密日程 C大阪は新チームを構築中

過密日程のなか、A・ロペスも本来の決定力を発揮できていない Photo/Getty Images

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新監督を迎えたなか、J1とACLEを戦う。川崎、横浜FMが同じ条件で戦っているが、監督交代しても継続性のある戦いができている川崎に対して、横浜FMはスティーブ・ホーランド監督のもと苦しい戦いを続けている。ACLEでは8強入りを果たしたが、J1では9節を終えて1勝5分け3敗で17位に沈んでいる。7得点は明らかにチームの実力と比べてもの足りず、ゴール欠乏症に陥っている。

横浜FMはアンデルソン・ロペス、エウベル、ヤン・マテウスと前線に個人能力が高い外国籍選手を揃えていて、彼らが「個」の力で突破を図ってくる。サイドバックも攻撃参加して畳みかけてくるスタイルで、破壊力のある攻撃がストロングポイントだと言える。ACLEではイメージどおりの戦いで勝ち上がることができた。

しかし、J1は各チームがこうした横浜FMのスタイルを十分に熟知していて、A・ロペスへの配球を厳しくチェックし、両サイドからの崩しには人数をかけて対応する。そうしたなか、過密日程を戦うことでチームのシンボルである前線の外国籍選手に疲労が溜まり、トップコンディションを維持できなくなっていった。植中朝日、井上健太、遠野大弥などとローテーションして戦っているが、横浜FM対策で守備を固める相手を崩すことができていない。

松原健、トーマス・デン、喜田拓也、ヤン・マテウスなど、ケガ人や体調不良が続出したのもホーランド監督を難しくしている。8節岡山戦が水曜日にアウェイで19時開始。9節東京V戦が土曜日にホームで14時からという中二日を終えたあとには、「なにかを落とし込もうとするとき、中二日だと映像での落とし込みになる」(ホーランド監督)とチーム作りの難しさを語っている。

メンバーをみれば横浜FMは17位にいるチームではない。シーズン当初から中二日で戦うことが多かったため、いまはホーランド監督の狙いをじっくりと落とし込む時間を取ることができていない。横浜FMが本来の力を発揮するまでには、もう少し時間がかかりそうだ。

アーサー・パパス監督を招聘したC大阪もチーム作りに苦戦している。とくに攻撃陣の組合せを模索しており、新戦力のチアゴ・アンドラーデ、ラファエル・ハットンの力がまだ十分には発揮されていない。ここ数試合はルーカス・フェルナンデスも含めて外国籍選手3名を同時起用しているが、まだ最適解を探っている状況だ。

田中駿汰、喜田陽、香川真司、北野颯太、中島元彦、上門知樹、本間至恩、柴山昌也、ヴィトール・ブエノなど、中盤から前線にかけて誰が出場してもおかしくない選手層となっている。シーズン当初は[4-2-3-1]だったが、いまは[4-3-3]で戦っている。このままいくのか、まだ変更があるのか。現状は不安定な戦いを続けているが、チームが持つポテンシャルを考えると今後の逆襲が楽しみである。

7節浦和戦から9節広島戦までの3試合は、アンカーに田中を配置し、インサイドハーフに北野、中島。1トップがR・ハットン、右にR・フェルナンデス、左にT・アンドラーデという布陣だった。現状、これがパパス監督の考えるファーストチョイスとなっているが、この3試合は1勝1分1敗だった。豪華な控えメンバーをどう起用して勝利につなげていくかが今後の課題になる。

選手では北野の躍動が目立ち、すでに4得点2アシストとなっている。ドリブルでボールを運べるし、積極的にゴールを狙うどん欲さもある。攻撃の起点になっていて、高校生でJ1デビューを飾った北野が20歳を迎えていよいよ本領を発揮している。パパス監督は北野をチームの中心に考えている印象もある。期待に応えるべく今後にどんなプレイをみせるか、北野には注目が必要である。

新潟は9節でようやく初勝利 FC東京は時間がかかるか

新潟は9節でようやく初勝利 FC東京は時間がかかるか

松橋監督を迎えたFC東京だったが、第9節を終えて降格圏の18位とスタートには失敗した Photo/Getty Images

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新潟を率いる樹森大介監督はJ2の水戸でユース監督、トップチームのコーチを務めた経験はあったが、Jでの監督経験はなかった。昨季の新潟はルヴァン杯で決勝進出を果たしたが、小島亨介、トーマス・デン、鈴木孝司、長倉幹樹、松田詠太郎などチームを去った選手が多く、未知数の監督を招聘したこともあって戦前から苦戦が予想されていた。

実際、8節を終えて4分け4敗と勝利がなかった。各選手が必死に足を動かして献身的に戦う新潟伝統のスタイルは受け継がれていて、どの試合も粘り強く戦っていた。ただ、耐えるだけでは苦しく、リードして終盤を迎えても逃げきれず、土壇場で追いつかれる流れが続いていた。

1節横浜FM戦、4節C大阪戦、5節東京V戦、7節G大阪戦はいずれもリードする時間帯がありながら、その後に追いつかれて引分けている。とくに、C大阪戦は91分、G大阪戦は97分に失点しており、ダメージの大きい嫌な流れが続いていた。

ただ、勝ててはいなかったが、樹森監督のもと自分たちのサッカーを貫いていた。9節神戸戦では12分に長谷川元希が奪ったゴールを最後まで守り抜き、ついに勝ち点3を得ている。「足りなかったのは勝ち点3だけだった。これまでも内容的には良い試合が多かったので、この勝利でステップしていけるのではないかと思っています」と樹森監督は手応えを口にしていた。

長谷川(4得点)、矢村健(3得点)がしっかりと力を発揮していて、点は取れている。守備面に課題を抱えるなか、神戸に競り勝ったことは成功体験になったはず。新潟はここから出遅れを取り戻さなければならない。

FC東京は松橋力蔵監督のもと[3-4-2-1]で戦うが、1トップの候補だったマルセロ・ヒアンを固定できず、チーム作りが進んでいない。山下敬大、仲川輝人、佐藤恵允などがこのポジションでプレイするが、どうも結果につながっていない。

インサイドハーフで出場する俵積田晃太もボールを運ぶスペースがなく、本来のウィングでプレイするときよりも力を発揮できていない。気づけば6試合勝ちがなく、9節を終えて18位まで順位を下げている。ここからどう巻き返すか、時間をかけたチーム作りに定評がある松橋監督の腕の見せ所となる。

最終ラインでは土肥幹太、岡哲平、木村誠二、中盤では安斎颯馬などが着実に経験を積み重ね、中盤では15歳の北原槙がピッチに立つ時間が増えている。いずれも下部組織出身の選手で、松橋監督にはこうした若手を成長させながらチーム力を高めていける手腕がある。大卒でドイツに渡り、逆輸入で戻ってきた佐藤もJ1でのプレイははじめてで経験を積んでいる最中である。

7節川崎との多摩川クラシコには0-3の完敗を喫したが、「悔しい結果になりましたが、試合の入りから攻撃的にいくというところはしっかりと表現してくれました。準備していたことを意識してプレイしてくれました」と松橋監督は言葉を残している。決して、防戦一方でなにもできなかった敗戦ではなかった。

もちろん、同時に修正点、課題も口にしていた。「シュートの数が少ないので、アタッキングサードのところのスキルをもっと上げないといけないです」。個人能力の高いマルセロ・ヒアンがこの問題を解決するのか、チーム全体で解決していくのか。選手個々の成長を期待する松橋監督が求めるのは、後者だと考えられる。

文/飯塚 健司

※電子マガジンtheWORLD304号、4月15日配信の記事より転載

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