国内3大タイトル(Jリーグ、ルヴァン杯、天皇杯)をもっとも多く獲得していて、かつては常勝軍団と呼ばれた鹿島だが、8年連続で国内無冠となっている。こうした状況を改善するべく、昨季途中にクラブレジェンドのひとりである中田浩二が強化責任者(フットボールダイレクター)となり、常勝時代にプレイしていた鬼木達監督を招聘し、レオ・セアラ、小池龍太などを獲得。松村優太、荒木遼太郎のレンタルバックなども行われた。
王座奪回を目指す鹿島の決断は開幕からここまで良い結果につながっていて、しっかりと上位をキープしている。レオ・セアラ、鈴木優磨の2トップに、中盤のワイドが右に小池、左に松村かチャヴリッチ。守備的MFは樋口雄太、柴崎岳、舩橋佑、知念慶でやりくりし、最終ラインが右から濃野公人、植田直通、関川郁万、安西幸輝、守護神に早川友基という[4-4-2]が基本布陣になっている。そして、鬼木監督のもと各選手が厳しくファイトする強度の高い攻撃的なサッカーを続けている。
得点ランキングのトップにいるレオ・セアラ(8得点)の決定力の高さはもちろん、俊敏性のある小池、松村の貢献度が高く、J1で2番目に多い16得点となっている(9節終了時点)。クラブ生え抜きの舩橋は順調に成長し、レギュラーポジションをつかみつつある。大卒3年目の師岡柊生も短いプレイ時間で2得点と結果を出している。徳田誉がU-20代表の遠征で負傷してしまったが、前線には田川亨介もいる。さらに、絶大なる存在感を誇る鈴木がドンと構えている。
中盤、前線の選手層が厚く、誰がピッチに立っても強度が落ちない。チームを率いる鬼木監督は選手としても監督としても優勝経験が豊富だ。勝つ術を知っている指揮官のもと、現在の得点力を維持できたなら鹿島が優勝争いから姿を消すことはないだろう。
川崎はアジアチャンピオンズリーグ・エリート(ACLE)を戦っていて試合数が多く、他クラブよりもチーム作りを進める時間が取れない。現役時代を川崎で過ごし、指導者となって帰ってきた長谷部茂利監督は、難しいミッションに挑んでいる。
ただ、チームにはこれまで作り上げてきたボール保有率を高く、ときに素早く、ときにしっかりとビルドアップして攻撃するスタイルが植えつけられている。即戦力の補強は伊藤達哉、大関友翔(レンタルバック)の2人だけだったが、もともと選手層が厚く、ケガ人が戻ることで誰が出場してもハイレベルなサッカーを維持している。
継続性を基本に、長谷部監督は布陣を[4-2-3-1]にほぼ固定。とくに中盤には良質な選手が揃っていて、7節FC東京戦に3-0の快勝を収めたあとに「これまでない4枚のボランチというシステムでやりたいぐらいです」(長谷部監督)という言葉を残している。この日は山本悠樹、大島僚太のダブルボランチでスタートし、河原創、橘田健人のダブルボランチで終了を迎えている。「同時に4人は出せないので、試合ごとに勝つための2人をコーチと選んでいます」とは長谷部監督で、他チームが羨む贅沢な戦力となっている。
前線には山田新とエリソンがいて、ウィングにもマルシーニョ、家長昭博、伊藤、宮城天、山内日向汰、瀬川祐輔とコマが揃っている。おもに脇坂泰斗が務めるトップ下のポジションもカバーできる選手が複数いる。シーズン序盤からリーグ戦、ACLEを戦う過密日程をこなしているが、長谷部監督はチームをうまくマネジメントしており、J1では上位をキープし、ACLEでも8強入りしている。
ここ数年の川崎はケガ人が多く、序盤は小林悠が戦線離脱していた。9節町田戦では橘田、ジェジエウが負傷交代となった。それでも、長年かけて築き上げてきた確固たるスタイルがあり、監督が変わっても方向性は決してブレていない。川崎もまた、上位で戦い続けると考えられる。